破産手続における財団債権の弁済を取上げます。
財団債権
財団債権は、破産手続によらずに破産財団から随時弁済を受けることができる債権(破産法2条7項)です。財団債権は、破産債権に先立って弁済されます(破産法151条)。
破産手続において、財団債権の弁済は、どのように行われるのでしょうか?
債権届出・調査・確定は不用
財団債権は、破産債権と異なり、債権届出、調査、確定の手続きを経ずに、債権の内容に従った履行を破産管財人に請求することができます。
破産手続開始決定を知った財団債権者は、速やかに財団債権を有していることを破産管財人に申出ることが要求されています(破産規則50条1項)。
破産管財人が認識していない財団債権
破産管財人が存在を認識していない財団債権は、弁済を受けることができません。
以下の期限までに破産管財人が認識していない財団債権は、配当可能な破産財団があっても弁済を受けることができません。
①最後配当の場合:破産債権者への配当通知を発するときまで(破産法203条)
②簡易配当の場合:配当異議期間が経過するまで(破産法205条、200条1項、203条)
財団債権の承認
破産管財人が財団債権を弁済するのに先立って、破産管財人が財団債権を承認することについて、裁判所の許可が必要です(破産法78条2項13号)。
財団債権の額が100万円以下の場合は、裁判所の許可は不用です(破産法78条3項1号、破産規則25条)。なお、大阪地裁の場合、金額にかかわらず、裁判所の許可は不用とする運用です(破産法78条3項2号)。
財団債権の弁済時期
財団債権は、破産債権に先立って弁済されるので、未払の財団債権が存在する状態で配当することはできません。したがって、配当可能、つまり、財団債権全額を弁済できるだけの破産財団が形成できる見通しが立てば、速やかに弁済することが求められます。
配当が見込まれない場合
配当可能な破産財団が形成されない、つまり、財団債権全額を弁済できない場合は、法令の優先順位に関わらず、債権額に応じて按分弁済を行います。
ただし、①破産債権者の共同の利益のためにする裁判上の費用の請求権(破産法148条1項1号)と②破産財団の管理、換価及び配当に関する費用の請求権(破産法148条1項2号)は、他の財団債権に優先します(破産法152条2項)。
さらに、上記①、②の内、(1)破産管財人の報酬と(2)債権者申立て又は第三者予納の場合の予納金相当額は、性質上、他の財団債権に優先すると解されています。実務上、(1)→(2)の順で最優先に弁済が行われています。