破産手続の取戻権に関して、代償的取戻権を取上げます。
代償的取戻権
破産者が破産手続開始決定前に取戻権の目的である財産を譲渡した場合、反対給付の請求権の移転を請求することができます(破産法64条1項)。これが、代償的取戻権です。破産手続開始決定後に破産管財人が譲渡した場合も同様です。
破産手続開始決定前に取戻権の目的物が第三者に譲渡された場合、代金相当額の損害賠償請求権等は、破産債権になります。取戻権者の保護を図るため、公平の見地から代償的取戻権が認められています。
譲渡
代償的取戻権は、取戻権の目的である財産が譲渡された場合に行使できます。譲渡の時期については、破産手続開始決定の前後を問いません。対象となるのは、譲渡であって、目的物の滅失や付合、加工の場合は、代償的取戻権を行使できません。
反対給付
代償的取戻権は、反対給付の請求権を移転するものなので、無償譲渡の場合は、行使することができません。
反対給付は、破産手続開始決定時に未履行である必要があり、破産手続開始決定時に反対給付が消滅している場合は、代償的取戻権を行使できません。
取戻権と代償的取戻権の関係
取戻権の目的物の譲渡契約が締結されているが、まだ破産財団に現存している場合、取戻権を行使することが可能です。この場合、取戻権と代償的取戻権のどちらかを選択して行使することができると解されています。
代償的取戻権の行使
代償的取戻権は、破産管財人に対して、意思表示によって行使することになります。具体的には、反対給付の請求権の移転の場合は、破産管財人に対して債権譲渡の対抗要件を具備するように求めることになります。
破産管財人が反対給付の請求権に基づいて弁済を受け、弁済の対象が反対給付に基づくものと特定できる状態で破産財団に現存している場合は、財産の給付を請求することになります。