破産手続における滞納マンション管理費の取扱い


破産手続におけるマンション管理費がどのように取扱われるか?を取上げます。

マンション管理費

 マンションの管理費・修繕積立費は、マンションの管理組合が定める管理規約に基づき、マンションの所有者が負担します。これは、区分所有法7条1項の「他の区分所有者に対して有する債権又は規約若しくは集会の決議に基づき他の区分所有者に対して有する債権」、「管理者又は管理組合法人がその職務又は業務を行うにつき区分所有者に対して有する債権」に該当します。

 マンション管理費の滞納があると、管理費を立替払いした区分所有者や管理組合は、債務者の区分所有権と建物に備え付けた動産の上に先取特権を有することになります(区分所有法7条1項)。

滞納したマンション管理費の破産手続における取扱い

 破産手続開始決定前に発生したマンション管理費は、別除権付の破産債権と扱われます。

 破産手続開始決定後に発生したマンション管理費は、財団債権と扱われます。

滞納したマンション管理費の支払

 破産者が滞納しているマンション管理費を支払うことは問題ないのでしょうか?

 マンション管理費は、居住するマンションの共用部分を利用する対価的性質を有しています。電気代や水道代等の光熱費の支払いとパラレルに考えることができます。

 したがって、マンションに居住している債務者が、破産申立前にマンション管理費を支払った場合、否認権の問題にはならないと考えられます。

 もっとも、免責決定を得れば、滞納しているマンション管理費の支払義務はなくなるので、あえて支払う必要はないと言えます。

マンションの任意売却・競売後の滞納マンション管理費

 破産申立てを選択した場合、所有している不動産は、管財人が売却します。オーバーローンで一定の要件を満たす不動産の場合、同時廃止で処理できる場合がありますが、その場合でも任意売却又は競売によって、不動産は失います。

 マンションが任意売却や競売で落札された場合、滞納していたマンション管理費は、どうなるのでしょうか?

新所有者も支払義務を負う

 マンション管理費を滞納したまま、マンションを譲渡した場合、譲受人である特定承継人(新所有者)も滞納マンション管理費を支払う義務を負います(区分所有法8条)。

 任意売却においては、滞納マンション管理費は売買代金に反映させ、売買代金の中から弁済されます。

 競売では、滞納マンション管理費は評価額に反映され、落札者が滞納マンション管理費を支払います。

破産手続開始決定前に任意売却・競売が行われた場合

 破産手続開始決定前に、任意売却・競売が行われた場合、特定承継人が弁済した滞納マンション管理費について、破産者に対して求償権が発生します。

 しかし、破産者が免責許可決定を得れば、免責されます。

破産手続開始決定後に任意売却・競売が行われた場合

 破産手続開始決定後に、破産債権である滞納マンション管理費のあるマンションについて任意売却・競売が行われた場合、特定承継人は破産債権である滞納マンション管理費の支払義務を負わないという見解もありますが、区分所有法8条の趣旨から、特定承継人は支払義務を負うと解されています。

 免責許可決定を得れば、破産手続開始決定前に発生したマンション管理費についての求償権は、免責の対象になります。

 しかし、破産手続開始決定後に発生したマンション管理費については、破産手続開始決定後に新たに取得した債権なので、免責の対象になりません。


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