破産手続の終了事由である廃止の内、異時廃止を取上げます。
破産手続の終了
破産手続は、配当の完了による破産手続終結決定(破産法220条1項)により、終了します。
しかし、全ての破産手続で配当がなされるわけではありません。配当に至らず、破産手続開始の効果を将来に向かって消滅させ、清算を完了しないまま破産手続廃止決定(破産法216条1項、217条1項、218条1項)により、終了する場合も多くあります。
破産手続の廃止
破産手続の廃止とは、前述のとおり、破産手続開始の効果を将来に向かって消滅させ、破産手続の清算目的を達成しないまま終了させることです。
破産手続の廃止は、以下の3つの種類があります。
破産手続廃止の種類
①破産財団の不足による廃止として、破産手続開始と同時になされる同時廃止(破産法216条1項)
②破産財団の不足による廃止として、破産手続開始後になされる異時廃止(破産法217条1項)
③破産債権者の同意による同意廃止(破産法218条1項)
異時廃止
破産手続開始決定により、破産管財人を選任後、破産財団が破産手続の費用を支弁するのに不足すると判明した場合、裁判所は、破産管財人の申立て又は職権で、債権者集会期日において、破産債権者の意見を聴取した上で、破産手続を廃止します。
破産手続開始後の廃止は、同時廃止との対比で、異時廃止といいます。
異時廃止の要件
異時廃止の要件は、破産財団が破産手続の費用を支弁するのに不足することです。
破産管財人が選任されている以上、官報公告費、各種送達・通知の費用等の最低限の手続費用と破産管財人の報酬は、確保されています。
したがって、異時廃止となるのは、財団債権の租税等が多額で、破産債権者へ配当できる破産財団がない場合がほとんどです。
大阪地裁の場合は、退職金等が高額なため、同時廃止の要件を満たさないが、自由財産の拡張の範囲内である場合も異時廃止となります。
異時廃止の決定
債権者集会又は書面による意見聴取で、破産債権者から異議がない場合、異時廃止の決定がなされます(破産法217条1項・2項)。
異時廃止の効果
異時廃止決定が確定すると、破産管財人の任務は終了します。
破産管財人は、財団債権の存否や金額に争いがなければ、弁済し、争いがある場合は、供託をします(破産法90条2項)。その後に開催される、任務終了による計算報告のための債権者集会において、計算報告を行います(破産法88条3項、89条1項)。
実務上は、破産債権者から異時廃止について異議が予想される場合を除き、破産手続廃止の意見聴取と任務終了による計算報告は、同一の債権者集会期日で実施されます。