免責不許可事由としての偏頗行為
特定の債権者に対する債務について、①当該債権者に特別に利益を与える目的又は②他の債権者を害する目的で、義務なくして担保を供与し、または債務を消滅させる行為は、著しい偏頗行為で、否認権の対象になる行為です。
そこで、破産法は、これらの行為を、破産者の不誠実さの表れとして、免責不許可事由としています(破産法252条1項3号)。
特定の債権者
特定の債権者とは、債権者が特定されていれば、複数の場合を含むと解されています。
弁済期未到来の給与債権や未発生の退職金債権を支払うといった破産手続開始決定後は、財団債権(破産法148条)の弁済であっても、破産財団の不足による異時廃止(破産法217条1項)の場合は、他の財団債権者に比べ特別の利益を与えることになります。そのため、特定の債権者に含まれます。
なお、別除権者(破産法65条)は、特定の債権者に含まれません。
特別の利益を与える目的
特別の利益とは、他の債権者との公平性を害する偏頗な利益であって、かつ、特別と評価されるものです。
債務者にその目的がなければならず、単なる認識ではなく、積極的な目的行為性が認められる必要があると解されています。
担保の供与・債務消滅行為
担保については、人的担保・物的担保を問いません。また、法定担保・非典型担保も問いません。
債務消滅行為は、弁済だけでなく、代物弁済・更改や相殺適状にない債権・債務の合意相殺などを含みます。
義務なくして
上記の債務消滅行為等が、債務者の義務に属さず、方法・時期が債務者の義務に属さないことが要件になります。
したがって、債務者が債権者に対して債務消滅の義務を負い、方法・時期とも定めのとおりに履行した場合は、偏頗行為ではあるが、免責不許可事由には該当しないことになります。