破産の免責不許可事由の一つである帳簿隠滅等の行為を取上げます。
業務及び財産の状況に帳簿、書類、その他の物件の隠滅等
業務・財産状況に関する帳簿類は、破産手続を公正・適切に遂行する上で、その基礎になる資料です。それらの資料の隠滅等の行為は、破産手続の適正な遂行を妨げるとして、破産犯罪を構成します(破産法270条)。さらに、破産財団の管理を困難にし、破産債権者の利益を害する行為です。
したがって、破産法は、これらの行為を免責不許可事由としています(破産法252条1項6号)。
業務及び財産の状況に関する帳簿
ここでいう帳簿は、商業帳簿に限られません。商業帳簿以外でも業務及び財産の状況に関する帳簿は対象となります。作成義務の有無も問いません。業務及び財産の状況について、日々の変動が記載されていれば、表題に帳簿と表示してなくても対象となります。
ちなみに、商業帳簿とは、会計帳簿及び貸借対照表をいいます。日記帳・仕訳帳・元帳・売掛帳・買掛帳などの補助簿も対象になります。また、可視性・可読性が確保されていれば、電磁的記録も対象になると解されています。
書類、その他の物件
業務及び財産の状況に関する帳簿以外の物件をいいます。預貯金通帳や不動産その他重要な動産の売買契約書や取引経緯の記録などが該当します。
隠滅等の行為
対象行為は、隠滅・偽造・変造です。これらの行為に関して、故意が必要とされています。もっとも、破産手続を妨害する目的までは、必要ないと解されています。