破産申立てをしたのに、免責にならないことがありますか?
破産の目的は免責許可決定を得ること
自然人(個人)が、債務整理の手続きで破産申立てを選択するのは、免責許可決定を得るのが目的です。破産申立てを行い、免責許可決定を得ることができれば、債務の支払義務がなくなります。
免責不許可事由があると免責されないことがある
破産法252条1項に免責不許可事由が列挙されています。免責不許可事由のいずれかがある場合、裁判所は、免責を認めない免責不許可決定をすることができます。
免責不許可事由は、①意図的に債権者を害する行為をした、②破産手続上の義務を怠り手続きの進行を妨害した、③免責制度にかかわる政策的なものの3つに分類することができます。
主な免責不許可事由
破産法に列挙されている免責不許可事由のうち、実務上問題になることの多いものをいくつか取り上げます。
①浪費・射幸行為
浪費とは、破産者の職業、収入、資産状況に照らして社会通念上、不相応の消費的支出をするすべての行為です。収入に比べて支出の程度が過大である場合をいいます。
詳しくは、以下の「破産の免責不許可事由ー浪費・賭博ー」を参照
大阪地裁の書式では、①1回2万円以上の飲食・飲酒、②投資・投機・ネットワークビジネス等、③10万円以上の商品購入、④ギャンブル、⑤ゲーム・有料サイトの料金について、チェック・報告することになっています。
②詐術による信用取引
詐術とは、氏名・生年月日等を偽って債務者の同一性を偽った場合、債務状況・財産状況を積極的に偽った場合、破産申立て後にその事実を告げない場合などが挙げられます。
裁判例においては、消極的態度によって相手方を誤信させた場合も詐術に含むとするものがあります。しかし、債務者は、支払不能後にも信用取引を継続していることが多く、積極的に虚偽の事実を告知した、資産・収入があるように誤信させるために積極的な行為を行った場合に詐術が認められると解する傾向にあるといえます。
詳しくは、以下の「破産の免責不許可事由ー詐術による信用取引ー」を参照
③不当な債務負担行為、不利益処分
不当な債務負担行為としては、著しく高金利の貸金業者から借入れをしたような場合が該当します。不利益処分としては、当初から現金に換金する目的でクレジットカードで商品を購入し直後に低価格で売却した場合が該当します。
新幹線の切符、家電製品、時計・鞄などのブランド品などをクレジットカードで頻繁に購入していると、免責不許可事由に該当するのではないか?という疑念が生じます。
詳しくは、以下の「破産の免責不許可事由ー不当な債務負担行為ー」を参照
免責不許可事由があっても免責される?
免責不許可事由に該当する場合でも裁判所は、破産手続開始決定に至った経緯その他一切の事情を考慮して免責を許可することが相当であると認めるときは、免責許可決定をすることができます(破産法252条2項)。これを裁量免責といいます。
裁量免責は、かなり緩やかに運用されています。したがって、免責不許可事由に該当するとして、免責が認められないことは、よほど悪質な場合を除いてはないといっていいでしょう。
破産申立てに際し、弁護士から免責不許可事由がないか?を必ず確認します。その際は、決して隠したりせず、正直に申告するようにしてください。