破産の免責不許可事由の一つである詐術による信用取引を取上げます。

詐術を用いて信用取引により財産を取得

 破産者が破産手続開始原因があることを知りながら,詐術を用いて信用取引によって財産を取得する行為は,詐欺罪に該当しうる行為であり,債務者の強い不誠実性を表すものです。また,このような取引を防止することで信用秩序全体の保護を図る趣旨からも免責不許可事由とされています。

支払不能の存在と認識

 免責不許可事由としての詐術による信用取引は,「破産手続開始の原因があることを知りながら」と規定しています。

 個人の破産手続開始原因は,支払不能なので,詐術を用いた時点で,破産者が支払不能であり,かつ,そのことを認識していることが前提となります。

 そのため,破産者が自分の信用や将来の見込について認識を誤り,まだ支払不能には陥っていないと認識している場合,この免責不許可事由には該当しないことになります。

詐術

 詐術とは,相手方に支払不能ではないと信じさせるために用いられる欺罔手段です。

 詐術に,積極的な行為が行われた場合を意味するのか?財産状態の不告知も含むのか?という問題があります。

 与信者の調査能力のシステム化,高度化が図られ,財産状態の不告知では,与信が行われないことからすると,詐術とは,積極的な欺罔手段を用いる場合を意味すると解されています。

 詐術の具体例としては,氏名,職業,収入,他の借入れの有無,保証人の有無等について虚偽の内容を告知することが挙げられます。

信用取引による財産の取得

 信用取引には,相手方に与信を与える一切の取引が含まれると解されています。クレジットカード,分割払い,手形払い,締日後一定日払い等の現物取引以外の取引を指します。

 信用取引によって,請負等の役務の提供契約を締結しても,破産法の文言上は,免責不許可事由に該当しません。しかしながら,クレジットカードでエステの契約をするなど,財産減少行為や浪費に当たり得る行為は,免責不許可事由として問題とされる場合があります。

1年間の期間制限

 詐術による信用取引が免責不許可事になるのは,破産手続開始申立日の1年前からの取引が対象になります。