破産の免責許可決定後に,免責対象となった債権について詐害行為取消権を行使できるかどうかについて判断した最高裁判決を紹介します。

最高裁平成9年2月25日判決

 債務者が破産の免責許可決定を受け,確定した後に免責の対象となった債権について,破産申立前に債務者が行った財産処分行為について,詐害行為取消権を行使できるかが争われました。

事案の概要

 Xは,甲社及びその代表取締役との間で基本取引契約を締結するとともに,代表取締役の妻Aとの間で,取引から生じる債務につき二億円の限度での連帯保証契約を締結し,Aに対し,二億円の連帯保証債権を有していた。Aは,甲社が倒産する数か月前に,自己の所有するAの親族の経営する会社の株式を同社の従業員であるYらに譲渡したが,当時Aには他にめぼしい資産はなかった。甲社の倒産後,Aは,自己破産の申立てをし,破産宣告及び破産廃止の決定(同時破産廃止決定)を受けた。その後,Xは,Yらに対して,Aに対する前記連帯保証債権に基づいて,Aが破産申立て前にした株式譲渡行為につき詐害行為による取消し等を求める本件訴訟を提起したが,一審係属中に,Aは,破産免責を受けて,同決定は確定した。

原審の判断

 原審は,以下のように,詐害行為取消権を行使することはできないと判断しています。

 Aが破産法上の免責決定を受けて,AのXに対する連帯保証債務にも免責決定の効力が及んでいるから,Xは,Aの連帯保証債務について,Aに対する強制執行が許されず,その準備行為としての詐害行為取消権の行使も許されない。

最高裁の判断

 最高裁は原審の判断を是認しています。

 詐害行為取消権は,債務者の責任財産を確保し将来の強制執行を保全するために債権者に認められた権利であるところ,原審の適法に確定した事実関係の下においては,XがAに対する本件連帯保証債務につき免責決定を受けてこれが確定したことにより,AのXに対する連帯保証債務履行請求権は,訴えをもって履行を請求しその強制的実現を図ることができなくなったものであり,その結果,詐害行為取消権行使の前提を欠くに至ったものと解すべきであるから,Aにおいて,Xが自己破産の申立て前にした財産処分行為につき,債権に基づき詐害行為取消権を行使することは許されないと解するのが相当である。