破産申立前に、給料が差押えられた場合、破産申立後に、給料の差押えは、どうなりますか?
破産手続と差押え
破産申立て前に給料が差押えられた場合の否認権との関係や大阪地裁での運用は、すでに取上げました。
詳しくは、以下の各記事参照
では、差押えの手続自体は、どうなるのでしょうか?差押えられた給料を受取ることはできないのでしょうか?これらは、破産手続が①管財事件か、②同時廃止かによって、その後の取扱いが異なります。
給料の差押え
そもそも、給料が差押えられると、どうなるのでしょうか?給与が差押えられると、会社は、従業員に給料を全額支払うことはできません。しかし、まったく給料を受取れないわけではありません。
会社は、従業員に対して、給料の4分の3を支払います(民事執行法152条1項2号)。額面ではなく、手取りの金額の4分の3です。そして、会社は、給料の4分の1を差押債権者に支払うか、法務局に供託します。
破産手続により、差押えは失効する
破産手続開始決定がなされ、破産管財人が選任されると、差押えは失効します(破産法42条2項)。差押えは失効するので、その時点から、給料の全額を受取ることができます。
管財事件の場合は、破産者自身が何か手続をする必要はありません。破産管財人が執行裁判所に通知を行います。
同時廃止の場合、差押えは中止になる
破産管財人が選任されない同時廃止の場合は、差押えは中止になります(破産法249条1項)。中止とは、手続がいったんストップするイメージです。ただし、破産者が、執行裁判所に強制執行停止の上申書等を提出する必要があります。
差押えが中止になると、会社は、4分の1を差押債権者に支払うことはできません。しかし、従業員に支払うこともできません。つまり、差押えの対象になっている4分の1部分の支払いが保留されます。
免責許可決定が確定すれば、差押えは失効する
その後、免責許可決定が確定すると、差押えは失効します(破産法249条2項)。この段階で、ようやく、給料の全額を受取ることができます。この場合も、執行裁判所に、強制執行効力失効の上申書等を提出する必要があります。
差押えが中止されていた間に、支払いが保留されていた4分の1部分についても、従業員は会社から支払いを受けることができます。