給与の差押えが破産手続でどのように扱われるか?を取上げます。給与の差押えに限定してますが、基本的には、強制執行一般に妥当します。
給与の差押え後に破産
債務の支払いを延滞し続け、債権者から支払督促や訴訟提起をされ、給与が差押えられて初めて、弁護士に相談し、破産するということがあります。
弁護士に依頼した時点で、各債権者に受任通知を発送し、支払いを停止します。
しかし、その間も差押の効力は継続していて、差押債権者による取立てが行われています。差押えは、破産手続きによって、影響を受けることはないのでしょうか?
否認権の対象
破産手続開始決定前に、破産者である債務者の財産を減少させる行為や債権者間の平等を害する行為があった場合、破産管財人は、本来、破産財団に帰属するはずだった財産を取戻すことのできる権利があります。この権利のことを否認権といいます(破産法160条以下)。
執行行為の否認
給与の差押えは、民事執行法に基づいて行われます。破産法は、否認しようとする行為が執行行為に基づくときでも否認権の行使を認めています(破産法165条)。債権者が強制執行により、現実に債権を回収した場合も、否認の対象と解されています。
詳しくは、以下の「破産手続における対抗要件否認と執行行為否認」を参照
債権者が債務者の給与を差し押さえ、債務者の支払不能を知った後、破産手続開始決定前に債権を回収した場合、否認権の行使が認められるか?が、ここでの問題になります。
判断基準時は?
否認の要件である支払不能後であるかどうかの判断基準について、①執行行為の申立時とする見解と②債権者が満足を得た(債権を回収した)時点とする見解があります。
②の債権者が満足を得た時点で支払不能かどうかを判断する見解が有力です。②を前提にすると、支払不能を知った後、破産手続開始決定前に債権を回収した場合、否認権の対象となります。
大阪地方裁判所の運用につづく
差押えと破産手続きの関係について、簡単に解説しました。以上を踏まえて、実際の大阪地方裁判所での運用を見ていくことにします。その話しは、次の機会にします。