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破産手続における転得者に対する否認権


破産手続における転得者に対する否認権の行使を取上げます。

転得者に対する否認権

 破産管財人は一定の場合、否認権を行使することによって、逸出した財産を取戻すことができます。

破産手続における否認権について

破産手続には、否認権という制度があります。否認権はどのような制度なのか?その概略を解説します。

 しかし、財産が受益者から転得者に移転してしまうと、受益者との間で否認権を行使しても、転得者から財産を取戻すことはできません。

 そこで、否認権の実効性を確保するために、転得者に対する否認権が認められています(破産法170条)。

転得者に対する否認権が認められる場合

 転得者に対する否認権が認められる場合は、限定されています。以下の場合に、転得者に対する否認権の行使が認められます(破産法170条1項)。

転得者に対する否認権行使が認められる場合

(1)転得者が転得の当時、それぞれの前者に対する否認の原因があることを知っていたとき

(2)転得者が内部者であるとき

(3)転得者が無償行為又はこれと同視すべき有償行為によって転得した場合で、それぞれ前者に対して否認の原因があるとき

転得者に対する否認権の要件

 共通の要件は、受益者と中間転得者について、否認の原因があることです。つまり、受益者について否認権を行使できることが、当然の前提になっています。

 上記の(1)の場合、転得者の悪意、つまり、転得の当時、それぞれの前者に対する否認の原因があったことを知っていたことが要件になります。

 転得の当時とは、原因行為の時及び対抗要件を具備した時のことをいいます。それぞれの前者に対するとは、受益者及び中間転得者のすべてを指します。

 なお、上記の(3)の場合は、転得者の悪意は要件とされていません。転得者が善意である場合は、現に受けている利益を破産財団に返還すれば足ります。

 上記(2)の内部者等とは、法人である破産者の取締役、理事、執行役、監事、監査役、清算人や個人である破産者の親族又は同居者のことです。転得者がこれらの内部者等である場合、事情を把握していることが多いということから、悪意について推定されます。転得者が否認の原因を知らなかったことが抗弁となります。


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