破産手続における委任契約の取扱い


破産手続と委任契約の関係を取り上げます。

委任契約の終了

 委任契約の当事者の一方が、破産手続開始決定を受けると、有償・無償を問わず、委任契約は終了します(民法653条2号)。委任契約が終了することにより、委任契約に基づいて付与された代理権も消滅します。

費用償還請求権等の取扱い

 前述のとおり、委任契約の当事者の一方が破産手続開始決定を受けると、委任契約は終了します。しかし、委任の終了は、相手方に通知した又は相手方が知っていたときでなければ、相手方に対抗することができません(民法655条)。

 したがって、受任者の破産を知らずに、委任者が委任事務を処理する可能性があります。そこで、破産法は、破産手続開始決定後の費用償還請求権や報酬請求権を破産債権と扱うことにしています(破産法57条)。

委任契約の終了に関する特約

 当事者の一方が破産すると、委任契約は終了するという民法の規定は、任意規定です。したがって、これと異なる特約は有効です。

 つまり、当事者の一方の破産手続開始決定を委任の終了事由としない委任契約を締結することができます。当事者の破産手続開始決定後に、有償の委任契約が存続する場合の破産手続における処理は、以下のようになります。

①委任者の破産で委任事項が破産財団に関するもの

 双方未履行の双務契約として、破産管財人は、委任契約の履行か、解除を選択することができます(破産法53条)。管財人が履行を選択した場合の報酬請求権は財団債権として扱われます(破産手続における一般の財団債権⑤参照)。

②委任者の破産で委任事項が破産財団に関わらないもの

 この場合、破産管財人の管理処分権は及ばないので、破産者である委任者が引き続き、委任者の地位にとどまることになります。報酬請求権についても破産者が負担することになります。

訴訟委任の場合

 弁護士への訴訟委任も委任契約の一種です。委任者が破産手続開始決定を受けると、上記の民法の規定により、訴訟委任関係は終了します。

 訴訟委任の委任事項が、自己破産の申立ての場合の委任関係は、委任契約において、破産手続開始を終了事由としない特約が含まれていると解されます。したがって、破産手続開始決定後も申立代理人は、代理人としての地位を失いません。


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