破産手続における双方未履行の双務契約の処理を取上げます。
破産法53条
破産法は、双方未履行の双務契約について、破産管財人が、①履行を選択し双務契約を実行するか、②契約を解除することを選択し双務契約を解消することができると規定しています(破産法53条)。
破産管財人が、①履行を選択した場合、相手方の権利は財団債権となります(破産法148条1項7号)。
一方、破産管財人が、②解除を選択した場合、相手方の原状回復請求権は、取戻権(破産法62条)又は財団債権(破産法148条1項8号)となります。
なお、②解除が選択された場合の相手方の損害賠償請求権は、破産債権(破産法2条5項)として扱われます。
破産手続開始決定時に、双方未履行の双務契約が存在する場合は、破産管財人は、①履行を選択するか?②解除を選択するか?の判断をする必要があります。管財人は、破産財団の増殖又は減少防止には、どちらの方が適しているのか?という観点から判断をします。
双方未履行の双務契約
破産法53条が適用されるのは、①双務契約であって、②双方の債務が未履行である場合です。
双務契約
契約当事者の双方の契約上の義務が対価的な関係にある双務契約が対象です。双務契約の典型は、売買・賃貸借・請負・雇用などです。非典型契約でも双務契約であれば、破産法53条の対象になります。
双方未履行
破産手続開始決定時、双務契約の履行の全部又は一部が契約当事者双方で未履行の場合、破産法53条の適用があります。
相手方の催告権
破産管財人が①履行を選択するか、②解除を選択するかが明らかにしない状態が続くと、相手方は不安定な立場に置かれます。
そのため、破産管財人に対して、相当な期間を定めて、期間内に①履行を選択するか、②解除を選択するかの確答をするよう催告することができます(破産法53条2項第1文)。
上記の催告を受けた破産管財人が、期間内に確答しない場合は、契約解除が選択されたとみなされます(破産法53条2項第2文)。