ファイナンスリース契約の内、フルペイアウト方式のファイナンスリース契約の倒産解除特約の有効性を判断した最高裁判決を紹介します。
最高裁平成20年12月16日判決
民事再生手続において、フルペイアウト方式のファイナンスリース契約の倒産解除特約の有効性が争われた事案です。
事案の概要
上告人は、産業用機械、情報機器等の各種物件のリース等を目的とする会社であり、A株式会社は、飲食店業等を目的とする会社である。
リース業者である株式会社Bは、平成5年5月1日から平成10年3月20日までの間に、複数回にわたり、Aとリース契約を締結し、当該物件を引き渡した。Bの営業等の譲渡を受け、リース契約の契約上の地位を承継した上告人は、平成11年3月10日、Aとリース契約を締結し、当該物件を引き渡した
各リース契約は、いずれも、リース業者が上記期間中にリース物件の取得費、金利及びその他の経費等を全額回収できるようにリース料の総額が算定されているいわゆるフルペイアウト方式のファイナンスリース契約である。本件リース契約には、ユーザーについて整理、和議、破産、会社更生などの申立てがあったときは、リース業者は催告をしないで契約を解除することができる旨の特約が定められている。
Aは、平成14年1月17日、東京地方裁判所に民事再生手続開始の申立てをし、同月21日、同手続を開始する決定がされた。上告人は、同月24日、Aに対し、本件特約に基づき本件リース契約を解除する旨の意思表示をした。
最高裁の判断
最高裁は、次のように述べ、本件リース契約の倒産解除特約は、無効であると判断しています。
本件リース契約は、いわゆるフルペイアウト方式のファイナンスリース契約であり、本件特約に定める解除事由には民事再生手続開始の申立てがあったことも含まれるというのであるが、少なくとも、本件特約のうち、民事再生手続開始の申立てがあったことを解除事由とする部分は、民事再生手続の趣旨、目的に反するものとして無効と解するのが相当である。
民事再生手続は、経済的に窮境にある債務者について、その財産を一体として維持し、全債権者の多数の同意を得るなどして定められた再生計画に基づき、債務者と全債権者との間の民事上の権利関係を調整し、債務者の事業又は経済生活の再生を図るものであり(民事再生法1条参照)、担保の目的物も民事再生手続の対象となる責任財産に含まれる。
ファイナンスリース契約におけるリース物件は、リース料が支払われない場合には、リース業者においてリース契約を解除してリース物件の返還を求め、その交換価値によって未払リース料や規定損害金の弁済を受けるという担保としての意義を有するものであるが、同契約において、民事再生手続開始の申立てがあったことを解除事由とする特約による解除を認めることは、このような担保としての意義を有するにとどまるリース物件を、一債権者と債務者との間の事前の合意により、民事再生手続開始前に債務者の責任財産から逸出させ、民事再生手続の中で債務者の事業等におけるリース物件の必要性に応じた対応をする機会を失わせることを認めることにほかならないから、民事再生手続の趣旨、目的に反することは明らかというべきである。
判決の射程
本件は、再建型倒産手続である民事再生手続における判断です。したがって、同じ再建型倒産手続である会社更生手続に本判決の射程が及びます。
清算型の倒産手続である破産手続にも本判決の射程が及ぶのか?は議論のあるところです。
当事者の事前の合意による責任財産からの逸出は、破産手続でも許されないはずです。そのように考えると、本判決は、破産手続にも妥当すると考えることができます。