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破産と訴訟の中断


破産手続開始決定がなされた場合、すでに係属している破産者を当事者とする訴訟はどうなるのでしょうか?

破産者を当事者とする訴訟は中断する

 破産手続開始決定がなされると、破産者を当事者とする訴訟手続は中断します(破産法44条1項)。

 破産債権者は、個別の権利行使が禁止され(破産法100条1項)、破産財団に属する財産の管理処分権が破産管財人に専属する(破産法78条1項)ため、破産者が当事者適格を失うからです。

破産手続における自由財産の拡張

自己破産しても、財産をすべて失うわけではありません。破産後に手元に残せる財産である自由財産の拡張について説明します。

破産財団に関する訴え

 破産管財人は、中断した訴訟のうち、破産財団に関する訴えを受継することができます(破産法44条2項前段)。破産財団に関する訴えの相手方も受継申立てをすることができます(破産法44条2項後段)。

 労働債権等の財団債権に関する訴訟は、破産財団に関する訴訟手続として中断し、破産管財人が受継することができます。

 破産債権者や財団債権者が提起した債権者代位訴訟・詐害行為取消訴訟も中断します(破産法45条1項)。

 これらの訴訟の対象となっているのは、破産財団に属する財産で、管理処分権が破産管財人に専属するためです。破産管財人は訴訟を受継することができ、訴訟の相手方も受継申立てをすることができます。破産管財人が詐害行為取消訴訟を受継した後は、否認訴訟に訴えを変更して進行します。

破産債権に関する訴訟

 破産債権に関する訴訟を破産管財人は、直ちに受継することはできません(破産法44条2項)。破産債権については、債権届出・調査・確定の手続(破産法117条以下)に進むからです。

破産債権の調査

破産手続における債権調査の概略を解説します。

 破産債権者が破産手続に参加するには、破産債権の届出を行う必要があります。債権調査、確定の手続を経て、破産債権を実体的に確定させます。

 債権調査において、破産管財人が認めて、他の債権者が異議を述べない場合は、破産債権は確定します(破産法124条1項)。破産債権者表の記載は、確定判決と同一の効力を有します。したがって、実体的に確定することになります。この場合、中断している訴訟手続は、当然に終了します。

 債権調査において破産管財人が認めなかった又は他の債権者が異議を述べた場合は、破産債権の確定手続として、中断していた訴訟手続を利用します。破産債権者が異議を述べた他の債権者等の全員を相手方として、訴訟受継の申立てを行います(破産法127条)。

中断しない訴訟手続

 慰謝料等の自由財産に関する訴訟、離婚訴訟などの身分関係に関する訴訟や株主総会決議取消訴訟といった法人の組織法上の事項に関する訴訟は、破産財団に属する訴訟ではありません。

会社の組織に係る行為等についての訴訟と破産手続

役員の選解任の株主総会決議不存在確認の訴え係属中に、会社が破産手続開始の決定を受けた場合、総会決議不存在確認の訴えの訴えの利益があるか?を判断した最高裁判決を紹介します。

 したがって、訴訟手続は中断することはありません。


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