破産手続における自由財産の拡張

破産は債務者である破産者の財産を換価して、債権者に配当する手続きです。破産すると、財産はすべて失うことになるのでしょうか?実は、破産しても一定の財産は手元に残すことができます。

破産財団

 破産手続開始決定時に破産者が所有する一切の財産は、破産管財人に管理処分権が移る破産財団となります(破産法34条1項)。破産管財人は、破産財団を増殖し・換価処分し、債権者へ配当します。しかし、破産者が所有する財産の中には、破産財団に属さない財産があります。

本来的自由財産

 99万円以下の現金及び差押禁止財産は、破産財団には属しません(破産法34条3項)。差押禁止財産という意味での自由財産を本来的自由財産と呼んでいます。

 差押禁止財産であっても、差押えが許されたもの、破産手続開始決定後に差押可能となったものは、自由財産ではなく、破産財団に属します。

自由財産の拡張

 破産者の経済的再生,生活保障を考えると,本来的自由財産のみでは,必ずしも十分ではありません。そこで,裁判所は,破産者の生活状況,本来的自由財産の種類・金額,破産者が収入を得る見込み等を考慮し,自由財産の範囲を拡張することができます(破産法34条4項)。

 裁判所が,自由財産の拡張の決定をするに際し,破産管財人の意見を聴く必要があります(破産法34条5項)。

大阪地裁の自由財産の拡張基準

 自由財産を拡張する基準は,各地の裁判所で異なっています。ここでは,大阪地方裁判所の自由財産の拡張の運用基準を紹介します。大阪地裁の運用基準の判断は,まず,自由財産の拡張を求める財産が,①拡張適格財産かどうか?次に,②99万円枠の審査という順序で行われます。

拡張適格財産

 以下の財産は,拡張適格財産として扱われています。

①預貯金・積立金

 普通預金は,現金に準じて取扱う。

②保険の解約返戻金

③自動車

④敷金・保証金返還請求権

⑤退職金

⑥電話加入権

⑦過払金返還請求権

 申立時に回収済み・確定判決取得済み・示談成立済みであることが必要

 上記①~⑦に該当する財産は,当然に拡張適格財産ということになります。それ以外の財産は,相当性の要件を充足することで,拡張適格財産として認められます。

99万円枠の審査

 普通預金を含む現金と拡張適格財産の合計額が99万円以下の場合は,原則,拡張相当と認められます。99万円を超過する場合は,不可欠性の要件を充足する必要があります。

相当性の要件

 破産者の経済的再生に必要かどうか?財産の種類・金額,換価して有用の資に充てるのか?保有し続けるのか?など個別具体的に相当性について判断されます。

不可欠性の要件

 破産者の生活状況・今後の収入の見込み,拡張を求める財産の種類・金額,その他の個別的な事情に照らして,99万円を超える財産が破産者の経済的再生に必要不可欠であるという特段の事情がある場合,例外的に拡張が認められます。