個人再生手続と訴訟


個人再生手続開始決定がなされた場合、すでに係属している再生債務者を当事者とする訴訟はどうなるのでしょうか?

個人再生手続開始決定がなされても訴訟は中断しない

 破産や通常再生と異なり、個人再生手続開始決定がなされても訴訟手続は中断しません(破産と訴訟の中断参照)。

 通常再生では、再生債権について争いがある場合、査定の裁判が行われます(民事再生法105条1項)。そして、異議があれば、異議の訴え(民事再生法106条1項)を提起することにより、最終的には訴訟手続で債権が実体的に確定します。

 しかし、個人再生手続においては,再生債権の評価(民事再生法227条)という簡易な裁判で、再生債権の存否や額を確定させるのみで、実体的な確定は行われません。

 したがって、実体的な債権確定手続が存在しない以上、訴訟手続は中断しないのです。

訴訟係属中に個人再生手続開始決定がなされた場合

 前述のとおり、訴訟手続は中断せず、訴訟はそのまま進行します。もっとも、債権者は、再生債権に基づく強制執行をすることができなくなります(民事再生法39条1項)。

 そこで、再生債務者としては、訴訟が無意味であることを説明し、債権者に訴訟を取下げてもらうよう交渉します。

個人再生手続開始決定後に訴訟提起された場合

 個人再生手続開始決定がなされた後に、債権者が再生債権に関する訴訟提起をすることも可能です。

 訴訟係属中に個人再生手続開始決定がなされた場合で述べたように、債権者に訴訟を取下げてもらうよう交渉することになります。

訴訟係属中に再生計画認可決定が確定した場合

 再生認可決定が確定すると、全ての再生債権者の権利は、再生計画における権利変更の一般的基準に従って変更されます(民事再生法232条2項)。

 そこで、訴訟係属中に再生計画認可決定が確定した場合は、再生債務者は、再生計画認可決定の確定を抗弁として訴訟で主張することになります。

再生計画認可決定確定後に訴訟提起された場合

 再生計画認可決定後に、弁済計画表に記載のない債権者から訴訟提起された場合、その債権が再生債権であれば、再生計画認可決定の確定を抗弁として訴訟で主張することになります。


PAGE TOP