個人再生を申立てた債務者が,申立前に交通事故を起こしていた場合,損害賠償請求権は,個人再生手続でどのように扱われるのでしょうか?

損害賠償請求権と再生債権

 再生開始決定前に生じた交通事故による損害賠償請求権は,再生開始前に生じた債権であり,再生債権に該当します。そのため,他の再生債権と同様に,個人再生手続によって,権利変更を受けることになります。

 民事再生法にも破産法と同様に非減免債権が存在します。交通事故が,①悪意に基づく場合,②故意又は重大な過失により加えた生命又は身体を害する不法行為であれば,非減免債権となります。

自動車保険の保険金請求権と個人再生手続

 交通事故の加害者である再生債務者が自動車保険に加入していれば,自動車保険に保険金を請求することができます。この保険金請求権が再生債務者の財産だとすると,清算価値の対象になります。

 被保険者が保険会社に対して有する保険金請求権は,被保険者が損害賠償義務を履行する際に金銭的援助を目的としています。つまり,被保険者が受領する保険金は,最終的には被害者に対して損害賠償金として支払われることが想定されていて,被保険者の財産となることは想定されていません。そうすると,清算価値に含まないと考えることができます。

保険法による解決

 保険法は,責任保険契約の被保険者に対して保険事故に係る損害賠償請求権を有する者は,保険給付を請求する権利について先取特権を有すると規定しています。

 また,保険金請求権に対する差押えが原則として禁止されています。保険金請求権は,差押禁止財産ということになり,破産手続では,本来的自由財産に該当します。個人再生手続においても,本来的自由財産は,清算価値の対象になりません。

 そして,被害者は,保険金請求権について先取特権を有しているので,別除権者となり,再生手続外において,直接,保険金請求権を行使することができます。