住特条項を利用するためだけに個人再生の申立てをすることはできますか?


住宅資金特別条項を利用するためだけに、個人再生申立てをすることができるのでしょうか?(住特条項については、個人再生と住宅資金特別条項参照)

住特条項を利用するためだけの個人再生申立て

 通常、個人再生の申立てをする場合、住宅ローン以外にも銀行のカードローンやクレジットカードの利用による債務などがあることが通常です。しかし、中には、以下のように、住宅ローン以外に債務がない場合も想定されます。

 ①他に債務はないが、住宅ローンの滞納があり、抵当権の実行を避けたい場合

 ②ペアローンで住宅ローンを組んでおり、他に債務はないが、配偶者と一緒に個人再生申立てを行い、住特条項を利用したいという場合

 ①や②のように、住特条項を利用するためだけに、個人再生の申立てをすることはできるのでしょうか?

 民事再生法は、個人再生手続を利用する要件として、住宅資金貸付債権以外の債権が存在することは、要求してはいません(民事再生法196条以下)。また、上記のように、住特条項を利用するためだけに、個人再生の申立てを行う必要性がある場合もあります。

 したがって、破産手続開始の原因となる事実の生じるおそれがあれば(民事再生法21条1項前段)、住特条項を利用するためだけに個人再生を申立てることができます。

再生計画案の策定

 住特条項を利用するためだけに、個人再生を申立てた場合も、再生再生計画案を策定する必要があります(民事再生法199条)。

 住宅ローン以外に債務がある場合は、①再生債権に対する権利変更の内容に関する一般的基準と②再生債権に関する弁済方法を定めます。

 しかし、住宅ローン以外に債務が存在しないので、これらを定める必要はないのではないか?という疑問が生じます。

 再生債務者が、住宅ローン以外に債務がないと認識していても、実は、他に債務があるというケースも考えられます。個人再生手続では、債権者一覧表に記載されず、再生債権者が届出できなかった債権も権利変更の対象とされます(民事再生法232条2項・156条、個人再生申立後に新たな債権者が判明した場合参照)。

 したがって、①再生債権に対する権利変更の内容に関する一般的基準と②再生債権に関する弁済方法についても定めておく必要があるといえます。


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