破産手続における否認権のための保全処分について取上げます。

否認権のための保全処分

 債務者が破産手続開始決定前に自己の財産を第三者に譲渡している等,破産手続開始決定後に破産管財人によって,否認権の行使が予想される場合があります(破産手続における否認権について参照)。この場合,否認権の行使による財産の引渡請求権を保全するために,第三者による当該財産の処分を禁止して,否認権行使の相手方を固定する必要がある場合があります。

 また,否認対象行為が債務の弁済である場合,第三者に対する金銭債権を保全するために,第三者の責任財産を保全する必要が生じるかもしれません。

 破産手続開始決定前には,破産管財人にも選任されておらず,否認権自体が発生していません。そのため,否認権を被保全権利として,民事保全の申立てをすることができません。

 そこで,破産法は,否認権のための保全処分という制度を設けています。

保全処分の発令手続

 利害関係人の申立て又は職権によって発動されます。状況に応じて,担保を立てる必要があります。

 申立てができる利害関係人は,保全管理人が選任されている場合は保全管理人が該当します。保全管理人が選任されていない場合は,債権者又は債務者が該当します。

 保全処分は,破産手続開始申立てがあった時から破産手続開始決定までの間,発令することができます。破産手続開始決定後は,管財人が民事保全の申立てをすることになります。

 保全処分が発令されるのは,①否認権が成立すること,②保全の必要性があることが要件になります。

保全処分の続行と担保

 否認権のための保全処分がされている場合,破産管財人は,破産手続開始決定後に,保全処分の手続を続行するかどうかを検討します。手続を続行する場合は,破産手続開始決定後1か月以内に裁判所にその旨を届出ます。1か月以内に続行されない場合,保全処分は失効します。

 保全処分が続行される場合,担保が破産財団に帰属する財産でない場合,担保を破産財団に帰属させるために,管財人は,担保の変換を申立て,裁判所は担保の変換の決定をしなければなりません。