住宅ローンがペアローンの場合、個人再生手続で住宅資金特別条項を利用できますか?
ペアローンの住宅ローン
住宅ローンの一種にペアローンがあります。リレーローンと同じく、親子ペアローンや夫婦ペアローンが存在します。
たとえば、親子ペアローンの場合、同一の金融機関から親のローン部分と子のローン部分を分けて、2つの金銭消費貸借契約を締結します。そして、共有不動産である住宅全体に、それぞれを債務者とする抵当権と設定します。
ペアローンの場合、住特条項を利用できるのか?
リレーローンと異なり、ペアローンの場合には、住特条項を利用できないのではないか?という指摘があります。というのも、ペアローンは、自分以外の債務を担保するために自分の共有持分に抵当権を設定しているからです。
リレーローンの場合の住特条項の利用の可否は、以下の記事参照
したがって、他人の債務を担保するために自己所有住宅に抵当権を設定している場合に該当し、住特条項を利用することができないのです。
詳しくは、以下の「個人再生と住宅資金特別条項」を参照
ペアローン当事者双方が個人再生を申立てる
住宅ローンがペアローンの場合、ペアローンを組んでいる双方が個人再生の申立てを行うことで、住特条項に関する問題をクリアできると解されています。
大阪地裁では、同一家計を営んでいる夫婦ペアローンの場合、同一家計を営んでいる者が、いずれも個人再生の申立てをし、いずれも住特条項を利用する場合は、原則として、住特条項の利用を認めるという運用をしています。
大阪地裁でこのような運用が行われているのは、次の理由に基づいています。住特条項を利用するに当たって、住宅ローン以外の債務を担保するための抵当権が設定されていないことが要件とされているのは、抵当権が実行されることで住特条項が無意味になることを避ける趣旨です。したがって、抵当権が法律上または事実上実行されない場合には、住特条項の利用を認めても法律の趣旨に反しないと解されます。
単独での個人再生の申立ては?
上記の考えをさらに進めると、たとえば、妻に住宅ローン以外に債務がまったく、住特条項で今まで通り返済するという約定型を定める場合、妻も個人再生の申立てをさせるのは、手続きを行う必要性がないといえます。
したがって、このような場合は、夫単独で個人再生の申立てを行い、住特条項を利用する余地があるのではないかと考えられます。
大阪地裁において、妻に住宅ローン以外の債務がない事案で、個人再生委員を選任した上で、担保権者の意見を聴いたうえで、住特条項が認められた事案があります。