主債務者が破産した場合の保証人への影響は、主債務者の破産と保証人で取上げました。では、保証人が単独で破産申立てをした場合、主債務者には、どのような影響があるのでしょうか?
保証人が破産したら…
実務上、会社の債務について、連帯保証人になっている会社代表者のみが破産申立てし、会社については、放置するという事案が見られます。このような場合、会社も支払い能力がないことが通常です。
しかし、今回は、主債務者が約定どおりに支払っているという事案について触れます。
期限の利益を喪失する?
主債務者自身が弁済を続けているので、期限の利益を喪失することはないのでしょうか?銀行の取引約款では、保証人が破産すると、銀行の請求によって期限の利益を喪失させることができるとされています。もっとも、銀行によって対応は異なるでしょうが、主債務者の期限の利益を喪失させることは少ないと考えられます。
破産手続きでの取扱い
破産手続きにおいては、保証債務履行請求権を現在化させ(破産法103条3項)、破産債権者は、保証債務履行請求権全額で破産手続きに参加できます(破産法104条1項、105条)
詳しくは、以下の「破産手続における開始時現存額主義」を参照
破産手続きに参加できるとは、配当を受けることができるということです。
保証人が複数の債権を保証している場合
債権の現在化は、債権ごとに適用されます。破産手続開始決定後に、主債務者が複数の債権の一部の債権を全額弁済したら、保証債務も消滅し、債権者は消滅した債権については、破産手続きに参加できません(最高裁平成22年3月16日判決)。
求償権が循環する?
保証人の破産管財人が債権者に配当を行った場合、債権者に配当した分について、主債務者に対する求償権を取得することになります。主債務者から求償権の支払いを受けると、追加配当(破産法215条)の原資になります。管財人が追加配当を行うと、また、求償権を取得することになり、理論的には循環が生じることになります。
実務上は、時間や手続きの煩雑さなどを考慮し、主債務者と和解することで解決を図ることが多いように思います。今回は、主債務者が弁済を続けていることを前提にしましたが、主債務者も破産することが多く、債権全額を弁済しない限り、求償権を行使できず、循環の問題は生じないことが通常です。