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破産手続と相殺禁止


破産法は、破産債権者の相殺権の範囲を民法の規定よりも拡張しています。しかし、一定の場合、相殺を禁止しています。

破産手続における相殺禁止

 破産法は、自働債権・受働債権のそれぞれについて、相殺権を拡張しています(破産法67条2項)。

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詳しくは、以下の記事参照

破産手続における相殺

破産手続における相殺の規律の概略を解説します。

 しかし、相殺を無制限に認めると、債権者間の平等を害するおそれがあります。特に、危機時期に相殺適状を作出した場合は、否認と同様に制限する必要があります。

 したがって、破産法は、危機時期に、破産債権者が破産者に対して債務を負担した場合、相殺を禁止することにしています(破産法71条)。

相殺禁止の主体

 相殺が禁止されるのは、破産債権者です(破産法71条1項)。ここでいう破産債権者には、別除権者である破産債権者も含むと解されています。優先的破産債権者も同様に、破産債権者に含まれると解されています。

 財団債権者が含まれるか?は、否定する見解が有力と言われています。①相殺禁止の対象が破産債権者であって、文言上、財団債権者を含まないこと、②財団債権は随時弁済を受けることができるので、相殺を認めても一般の破産債権者の権利を害しないことが理由です。

相殺禁止の対象

 相殺禁止の対象になるのは、破産手続開始決定後に、破産債権者が破産財団に対して債務を負担する場合(破産法71条1項1号)です。

 相殺権の行使の基準時は、破産手続開始決定時です。破産手続開始決定時に相殺適状にない場合は、相殺を認めるのは相当ではないというのが、その理由です。

危機時期における債務負担

 また、破産法は、危機時期における破産者に対する債務負担を相殺禁止の対象にしています(破産法71条1項2号・3号・4号)。

 破産手続開始決定時には相殺適状にあるが、支払停止や破産手続申立後になされた場合、債権者平等を害するおそれがあるため、一定の要件の下に相殺を禁止したものです。

支払不能後の債務負担

 破産者が支払不能に陥った後、破産債権者が、支払不能であることを知って、破産者に対し債務を負担した場合、以下の要件を満たす場合、相殺は禁止されます(破産法71条1項2号)。

支払不能後の債務負担が相殺禁止に当たる場合

①専ら相殺に供する目的で、破産債権者が破産者の財産の処分を内容とする契約を破産者と締結した

②破産者に対し債務負担する者の債務を引き受けることを内容とする契約を締結することによって、破産者に対し債務を負担した

支払停止後の債務負担

 破産者が支払停止後に、破産債権者が支払停止を基礎づける事実を認識して、破産者に対し債務を負担した場合、相殺は禁止されます(破産法71条1項3号)。

破産手続開始申立後の債務負担

 破産者が破産手続開始申立を行った後、破産債権者が申立ての事実を知って、破産者に対し債務を負担した場合、相殺は禁止されます(破産法71条1項4号)。


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