相殺(破産手続における相殺参照)に関する破産管財人の催告権を取上げます。
破産管財人の催告権
相殺権を有する破産債権者が、相殺権を行使しないまま、破産手続が進行していくと、以下のように、破産手続に重大な支障が生じます。
まず、破産管財人は、債権の回収に着手するかどうか?の判断ができません。そのため、管財人の業務に支障が生じます。また、相殺権を有する破産債権者が、債権届出を行っている場合、配当対象となる破産債権が確定しません。
そこで、破産手続の迅速な進行を図るために、破産管財人から相殺権を有する債権者に対して、相殺権を行使するかどうか?の確答を催告することができます(破産法73条)。
破産管財人の催告権の要件
破産管財人による相殺の催告権の要件は、次のとおりです(破産法73条1項)。
破産管財人による相殺の催告権の要件
①一般調査期間の経過又は一般調査期日が終了していること
②相殺権者である破産債権者の負担する債務の弁済期が到来していること
催告の方法・内容
破産管財人の催告権は、相殺権を有する破産債権者に対して、自働債権となる破産債権を特定した上で、1か月以上の催告期間を定め、相殺を行うかどうか?の確答を求める方法で行使されます。
なお、催告権の行使に当たって、破産管財人は受働債権を特定をする必要はありません。
破産債権者からの相殺権を行使するとの確答といえるには、自働債権と受働債権を明示した上で、相殺の意思表示を行う必要があります。
催告の効果
破産管財人から催告を受けた破産債権者は、定められた期間内に確答しなければ、当該自働債権について相殺の効力を主張することはできません(破産法73条2項)。
相殺権の行使ができなくなった場合、破産管財人は、破産債権者から受働債権を回収します。自働債権である破産債権は、配当対象債権として配当表に記載することになります。