主債務者が破産をした場合の保証人への影響は、主債務者の破産と保証人で取上げました。今回は消滅時効との関係を取上げます。
主債務者が破産をすると…
主債務者が破産すると、債権者は主債務者から債権を回収できません。したがって、債権者は、保証人に対して、保証債務の履行を請求します。しかし、何らかの理由で、債権者が保証人に対して、保証債務の履行を長期間請求しないことがあります。
それでは、主たる債務の消滅時効期間が経過した後で、債権者から保証債務の請求があった場合、保証人は、主たる債務の時効を主張(法律では、援用するといいます。)することができるのでしょうか?
最高裁平成15年3月14日判決
主債務者である会社が、破産手続きの終結により終了した後に、保証人が主たる債務の消滅時効を援用できるか?が争われた事案です。
法人格は消滅する
会社が破産宣告を受け、破産終結決定がされると、会社の法人格は消滅します。法人格が消滅すると、会社の負担していた債務も消滅すると最高裁は判断しました。
消滅した債務の時効は援用できない
すでに存在しない債務について、時効による消滅を観念する余地はなく、保証人は、主債務の消滅時効を援用することはできないと最高裁は判断しています。
法人格が消滅しない場合は?
最高裁平成15年判決の事案は、会社の法人格がすでに消滅していた事案です。
破産手続きは、異時廃止(破産法217条)で終了することがあります。異時廃止の場合、配当できる財産がなく(破産法217条1項)、配当手続を行いません。
異時廃止の場合は、配当すべき破産財団はないことは確定しています。しかし、なお、清算未了の財産が残っている可能性があります。したがって、会社は清算の目的の範囲で存続する(破産法35条)と解されています。
この場合は、保証人は主債務の消滅時効を援用することができると考えられます。最高裁平成7年9月8日判決は、会社の破産手続きが破産廃止で終了した後、保証人が主債務の消滅時効の援用を認めた原審の判断を是認しています。
主債務者が個人の場合
上記は、すべて主債務者が会社、つまり、法人の話しです。主債務者が個人の場合は、そもそも、法人格の消滅の問題は生じません。
最高裁平成11年11月9日判決は、破産者が免責決定を受けた場合、免責決定の効力の及ぶ債務の保証人は、主債務の消滅時効を援用することはできないと判断しています。
最高裁平成11年11月9日判決の詳細は、以下の記事参照
破産の免責許可決定の効力の及ぶ債務の保証人と消滅時効の援用
主債務者が破産により免責許可決定を受けた場合、その債務を保証した保証人が主債務の消滅時効を援用できるか?を判断した最高裁判決を紹介します。