会社代表者が破産申立てを行う際の問題点等を取り上げました(会社代表者の破産申立て参照)。小規模な会社の代表者が個人再生を申立てる場合、何か問題はあるのでしょうか?
会社代表者の個人再生における問題点
個人再生手続きにおいては、債務者の財産・収支状況を把握した上で、再生計画案を履行できるということを明らかにする必要があります。
会社代表者の財産については、会社と代表者個人の財産が明確に区別されていないことが多く、代表者の財産を把握するためには、会社財産についても把握する必要があります。
また、多くの場合、代表者は会社の株式を保有しています。その株式は通常、非公開です。したがって、代表者が保有する株式の財産的価値をどのように評価するのか?が清算価値との関係で問題になります。
大阪地裁で個人再生を申立てる際の必要資料
会社代表者が個人再生を申立てる際に、大阪地裁では、最低限、以下の資料の提出が求められます。なお、これらの資料は、あくまでも必要最小限の資料です。申立後に、裁判所から追加の資料の提出を求められることがあります。
申立時に提出が必要な資料
①商業登記履歴事項全部証明書
②決算報告書(2期分)の写し
③会社の事業に関する報告書
④会社の債権者一覧表
⑤会社の財産目録
⑥会社の事業収支実績表
個人再生委員の選任
大阪地裁では、事業による負債が3,000万円を超える個人事業主の場合は、個人再生委員を選任します。会社の負債又は代表者の会社の事業に伴う負債が3,000万円を超える場合は、個人再生委員が選任されることになるとしています。
負債額が3,000万円を超えない場合でも会社と代表者の財産が明確に区別されず、代表者の財産・収支状況を把握するのが困難な場合には、個人再生委員が選任されることになります。
法律事務所エソラで扱った以下の案件でも個人再生委員が選任されました。
個人再生申立前に親族による援助で自宅不動産の抵当権を抹消し個人再生で自宅不動産を残した事例
法律事務所エソラで扱った個人再生の解決事例の一例を紹介します。 ①依頼者 依頼者は、自営業者兼法人の代表者です。事業のための借入が多額になったことから、債務整理を決意、自宅不動産を残すため、個人再生の申立てを希望されて […]
会社が営業を停止している場合
会社が営業を停止して清算手続きが終了している場合は、会社の財産と代表者の財産が区別されているので、代表者の財産を把握するのは容易だと考えられます。
しかし、会社が営業を停止していて、事実上の倒産状態ではあるが、清算手続きが終了していない場合は、やはり、財産の区別の問題が生じます。
株式の評価
会社代表者が保有している会社の株式が財産的価値があるのであれば、清算価値の対象になります。株式の評価に関しては、1株当たりの純資産額が目安の一つになると考えられます。
個人再生委員が選任されていれば、個人再生委員の意見を聴くことや、会社の税務を担当している税理士等の専門家の意見を聴き、評価するということも考えられます。