個人再生申立前に親族による援助で自宅不動産の抵当権を抹消し個人再生で自宅不動産を残した事例
法律事務所エソラで扱った個人再生の解決事例の一例を紹介します。
①依頼者
依頼者は,自営業者兼法人の代表者です。事業のための借入が多額になったことから,債務整理を決意,自宅不動産を残すため,個人再生の申立てを希望されていました。
※会社代表者の個人再生申立て全般の問題は,会社代表者の個人再生申立て参照
②問題点
この事例では,次の2つの問題点をクリアする必要がありました。
(1)自宅不動産に,住宅ローン以外に事業資金の借入れを担保とする根抵当権があった
自宅不動産に,住宅ローン以外の債務を担保する抵当権が付いている場合,個人再生の申立てに当たって,住宅資金特別条項(住特条項)と使うことができません(個人再生と住宅資金特別条項参照)。住特条項が使えないと,個人再生の申立てを行っても,自宅不動産を残すことができません。
(2)個人再生申立前過去2年の所得が0円だった
依頼者の自営収入は,減少していたものの,それなりの収入がありました。しかし,過去2年は多額の経費がかかっていたため,所得は0円でした。個人再生は,債務を大幅に減額されますが,今後も一定の額の債務の支払を継続する手続なので,今後も継続してある程度の所得がなければ,裁判所に認められません。
③解決策
上記2つの問題点について,以下のように対処しました。
(1)個人再生申立前に親族の援助で債務を返済し根抵当権を抹消
住特条項を使うためには,自宅不動産の根抵当権を抹消する必要がありました。幸い,援助してくれる親族がいたため,個人再生申立前に親族の援助により,債務を返済し,根抵当権を抹消することができました。
(2)毎月の帳簿を提出し数字を裏付ける
まず,依頼者に毎月,帳簿をつけてもらいました。そいて,個人再生の申立てに際しては,裁判所に,従業員を減らし大幅に経費を削減したことで,相当程度の所得が見込めることを説明するとともに,帳簿を提出し数字の裏付けを行いました。
④結果
依頼者が個人事業主兼法人の代表者であったこと,総債務額が高額だったことから,個人再生委員が選任されましたが,最終的に,再生計画は認可されました。
個人再生の申立てにより,債務を3000万円以上減額した上で,自宅不動産を残すことができました。
当初債権額 | 再生計画による弁済額 | 当初債権額 | 再生計画による弁済額 | ||
債権者A | 3,007,967 | 300,797 | 債権者K | 1,894,610 | 189,461 |
債権者B | 3,551,321 | 355,133 | 債権者L | 1,127,898 | 112,790 |
債権者C | 576,287 | 57,629 | 債権者M | 2,228,485 | 222,849 |
債権者D | 8,735,635 | 873,564 | 債権者N | 737,976 | 73,798 |
債権者E | 968,454 | 96,846 | 債権者O | 2,775,039 | 277,504 |
債権者F | 594,310 | 59,431 | 債権者P | 33,568 | 3,357 |
債権者G | 1,183,128 | 118,313 | 債権者R | 139,419 | 13,942 |
債権者H | 927,652 | 92,766 | 債権者S | 919,000 | 91,900 |
債権者I | 4,363,840 | 436,384 | 債権者U | 3,008,587 | 300,859 |
債権者J | 133,144 | 13,315 | 小計 | 12,864,582 | 1,286,460 |
小計 | 24,041,738 | 2,404,178 | 合計 | 36,906,320 | 3,690,638 |