個人再生手続きにおいて、どのような場合に個人再生委員は選任されますか?
個人再生委員とは?
個人再生委員は、①債務者の財産・収入状況の調査、②債務者が適正な再生計画案を作成するのに必要な勧告、③再生債権の評価に関する裁判所の補助の3つのうち、裁判所が指定した職務を行います(民事再生法223条2項)。
通常の民事再生手続きでは、監督委員が選任されます(民事再生法54条2項)。しかし、個人再生手続きで、監督委員を選任すると、費用が高額になりすぎてしまいます。そこで、個人再生手続きでは、監督委員ではなく、必要最小限の職務を行う機関である個人再生委員が選任されます。
大阪地裁の運用
大阪地裁では、以下の場合には、原則として、個人再生委員を選任しません。
個人再生委員を選任しない場合
弁護士が申立人の代理人であって、以下の⑴又は⑵に該当する場合
(1)負債総額が3,000万円以下
(2)負債総額が3,000万円以上でも事業による負債ではない場合
それは、上記②の職務を申立人代理人である弁護士が行い、個人再生委員を選任する必要性がないと考えられているからです。上記①についても、債務者が零細事業者や給与所得者の場合は、個人再生委員を選任することが費用対効果に合わないと考えられています。
大阪地裁で個人再生委員が選任される場合
上記以外の場合は、個人再生委員が選任されます。事業による負債が3,000万円を超える個人事業主は、事業規模が零細とはいえず、売掛・買掛、手形取引等を反復継続して行っており、財産・収入の把握や再生計画の履行可能性の判断に困難が伴うと考えられています。
したがって、住宅ローンと保証債務を除いた実質的債務が3,000万円を超える事業者が個人再生申立てを行う場合は、弁護士が申立人代理人であるかどうかを問わず、個人再生委員が選任されます。個人再生委員が選任されると、個人再生委員選任費用相当額として、30万円程度を申立時に納める必要があります。
また、申立人代理人に弁護士が就いてない場合も個人再生委員が選任されます。
もっとも、負債総額が3,000万円未満で弁護士が申立人代理人であっても、債務者に財産隠しがうかがわれるような事情があれば、個人再生委員が選任されます。