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個人再生の住特条項の種類


個人再生手続きは、住宅資金特別条項(住特条項といいます。)を利用することで、住宅ローンのある自宅不動産を処分せずに他の債務を圧縮することができます(住特条項については個人再生と住宅資金特別条項参照)。住特条項には、いくつか種類があります。

住特条項の種類

 住特条項には、以下の5つの種類があります。その内、民事再生法に規定があるのは②~⑤の4種類です。

住特条項の種類

①約定型

②期限の利益回復型

③リスケジュール型

④元本猶予期間併用型

⑤同意型

①約定型の住特条項

 債務者が住宅ローンについて期限の利益を喪失しておらず、個人再生申立後も裁判所の弁済許可を受け(民事再生法197条3項)、住宅ローンの支払を続け、再生計画で今までどおりの内容で住宅ローンを支払う場合を約定型の住特条項と呼んでいます。

 個人再生の申立てをする債務者は、住宅ローンは延滞していないことが多く、他の債務の支払が大幅に減ると、無理なく住宅ローンの返済ができることが多いです。そのような場合、住宅ローンは今までどおり支払うという内容の再生計画を定めることになります。

 実務上も最も多いのが、約定型の住特条項です。民事再生法の定める住特条項の種類としては、②の期限の回復型に該当します。

②期限の利益回復型の住特条項

 民事再生法の定める住特条項の原則が、期限の利益回復型です(民事再生法199条1項)。住宅ローンの返済が滞り、期限の利益を喪失した場合に、遅延分を一定期間内に弁済することで、期限の利益を回復させるものです。

 (1)再生認可決定確定時までに弁済期が到来する住宅ローンについて、次の全額を再生計画で定める住宅ローン以外の債務の弁済期間内に支払う

 ⅰ)元本及び再生認可決定確定時から住特条項によって定めた元本の弁済期までの利息

 ⅱ)再生認可決定確定時までに発生する利息

 ⅲ)債務者が住宅ローンの支払を怠ったことによる遅延損害金

 (2)再生認可決定確定時までに弁済期が到来しない住宅ローンについて、次の全額を住宅ローンの元の契約に従って弁済する

 ⅰ)元本

 ⅱ)再生認可決定確定後の利息

③リスケジュール型の住特条項

 期限の利益回復型の住特条項による再生計画の認可が見込めない場合に認められる住特条項です(民事再生法199条2項)。

 住宅ローンの弁済期間を延長することで、1回当たりの弁済額を少なくすることができます。

 ただし、変更された弁済期間は元の住宅ローン契約の最終弁済期から10年以内で、かつ、変更後の最終弁済期の債務者の年齢が70歳を超えないことが要件です。

④元本猶予期間併用型の住特条項

 リスケジュール型の住特条項によっても再生計画の認可が見込めない場合に認められる住特条項です(民事再生法199条3項)。

 住宅ローンの弁済期間の延長とともに、再生計画による住宅ローン以外の債務の弁済期間中は、住宅ローンの元本の一部及び残元本総額に対する利息のみを支払います。そして、猶予期間後に残元本・利息・遅延損害金を支払うという内容です。

 再生計画に従って、住宅ローン以外の債務を弁済している間の住宅ローンの返済額を減らし、他の債務の弁済終了後に住宅ローンを集中的に返済することを目的とするものです。

⑤同意型の住特条項

 住宅ローン債権者の同意を得ることで、上記の住特条項の内容を超える住特条項を定めることが認められます(民事再生法199条4項)。たとえば、住宅ローンの弁済期間を10年を超えて延長することも可能になります。

住特条項の相互関係

 上記の住特条項は、再生債務者が、自由に選択できるわけではありません。再生債務者は、まず、①②の約定型・期限の利益回復型の住特条項を利用できるか?を検討します。そして、①②では、実現可能な再生計画を策定できない場合に初めて、③のリスケジュール型の住特条項を利用できます。さらに、③では、実現可能な再生計画を策定できない場合に初めて、④の元本猶予期間併用型の住特条項を利用することができます。

 ⑤同意型の住特条項は、再生債務者と住宅ローン債権者の合意によるもので、他の種類の住特条項と補充関係にはありません。


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