滞納家賃の個人再生での取扱い


家賃の滞納がある場合、滞納家賃は、個人再生手続きでどのように扱われますか?

滞納家賃は再生債権

 再生手続開始前の原因に基づき生じた財産上の請求権は、再生債権です(民事再生法84条1項)。滞納家賃も再生債権に該当します。

 なお、再生手続開始後の家賃は、共益債権に該当します(民事再生法198条2号)共益債権は、再生手続によらずに、随時弁済することができます(民事再生法211条1項)。したがって、再生手続開始後の家賃が問題になることはありません。

再生債権は弁済できない

 個人再生の申立てをしたこと、再生手続開始決定がなされたこと自体を理由とする賃貸借契約の解除は認められません。しかし、家賃の滞納を理由として解除権が発生していれば、貸主は解除権を行使して賃貸借契約を終了させることができます。賃貸借契約の解除を避けるため、借主である債務者は、滞納家賃を弁済したいと考えるでしょう。

 しかし、再生債権については、弁済禁止効が働くため、再生手続開始決定後は、民事再生法で定める特別の場合を除いて、再生計画に定めるところによらなければ、弁済することができません(民事再生法85条1項)。

 したがって、個人再生手続開始決定後に、債務者が、滞納家賃を通常の家賃に上乗せして支払うといったことは認められません。

弁済許可を受ければ弁済できる

 裁判所から弁済許可を受ければ、再生手続開始決定後にも再生債権を弁済することができます。その要件は、事業の継続に著しい支障を来すことを避けるための少額債権であることです(民事再生法85条5項)。

 したがって、滞納家賃の額が少額で、かつ、自宅が店舗や事務所を兼ねていて、明渡すと事業継続が不可能になり、再生計画の履行が不可能になるというような場合に限って、弁済許可が認められます。

 つまり、滞納家賃が過大である場合や、自宅を明渡すと引っ越し費用がかさむなどというような場合には、弁済許可は認められません。

敷金の充当と積み増しは?

 敷金を充当することで、滞納家賃を0にすると、滞納家賃の問題は解消します。貸主から敷金の積み増しを求められた場合、それは、再生債権の履行当たります。しかし、上記のように、再生債権には、弁済禁止効が働くため、敷金の積み増しをすることは、認められません。

第三者弁済を行うのが無難

 滞納家賃の問題は、弁済禁止効との抵触を避けることができません。そこで、滞納家賃の弁済にしろ、敷金の積み増しにしろ、最も問題がないのは、家族や親族といった第三者に弁済してもらうことです。第三者弁済であれば、弁済禁止効に抵触することもありません。


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