個人再生手続で巻戻しにより住特条項を用いた場合、強制執行費用などの費用を負担する必要がありますか?
個人再生の巻戻しと競売中止命令
個人再生には、住宅ローンを滞納し、保証会社の代位弁済後にも住特条項を利用できる「巻戻し」という制度があります。
巻戻し制度を用いれば、代位弁済後に抵当権を実行されても住特条項を利用することができます。
詳しくは、以下の「個人再生の巻戻しと競売中止命令」を参照
個人再生の巻戻しと競売中止命令
個人再生手続には、巻戻しという制度があり、住宅ローンを滞納して保証会社が代位弁済した後も住特条項を利用できる場合があります。競売手続が開始された場合も巻戻しによって住特条項を利用できるのでしょうか?
巻戻しによって、競売が取下げや取消しで終了した場合、競売費用や抵当権移転登記費用などを誰が負担するのか?が問題になります。
巻戻しに伴い生じる可能性のある費用
巻戻しによって、費用負担の問題が生じる可能性がある費用には、次のようなものが考えられます。
巻戻しによって生じる可能性がある費用
①取下げや取消しによって終了した競売費用
②抹消すべき抵当権移転登記費用
③住宅ローンの弁済期間を延長した場合の延長期間の火災保険料
④住宅ローンの弁済期間を延長した場合の延長期間の保証会社への保証料
当然に債務者の負担になるわけではない
上記の費用は、巻戻しや競売中止命令によって生じることになる費用です。巻戻しの直接の効果として、当然に再生債務者の費用負担になることはありません。
住特条項のリスケジュール型(民事再生法199条2項)や元本猶予期間併用型(民事再生法199条3項)を定め、住宅ローンの弁済期間を延長した場合も保証人に法律上の不利益があるわけではありません。延長保証料の負担も当然に再生債務者の負担になるわけではありません。
契約で費用負担について定められている場合がある
住宅ローン債権者や保証会社との間の契約で、費用負担に関する具体的な条項があれば、当然、再生債務者はその条項に従う必要があります。
契約上、債務者に対する権利行使費用が債務者負担とされている場合、住宅ローン債権者は、競売費用や抵当権移転登記抹消費用を再生債務者に請求することができます。保証委託契約において、主債務者に対する権利行使費用の定めがある場合も同様です。
住宅ローン契約に住宅への火災保険の付保と質権の設定の約定がある場合、再生債務者はその義務を負います。保証委託契約で保証料を保証期間に応じて支払うとの条項があれば、保証会社は再生債務者に延長保証料を請求できます。
再生債務者の費用負担となった場合の個人再生での取扱い
これらの費用が再生債務者の負担となった場合に、個人再生手続きでどのように扱うのか?は、いまだ定説がありません。
再生債権(民事再生法84条)と捉え、他の再生債権と同様に再生計画に従って権利変更し、弁済するという見解や、再生債権ではなく、共益債権(民事再生法119条5号)として随時弁済(民事再生法121条1項)の対象とするという見解があります。