個人再生の巻戻しと競売中止命令

 個人再生には,住宅ローンを滞納し,保証会社の代位弁済後にも住特条項を利用できる巻戻しという制度があります(巻戻しの詳細)。巻戻し制度は,代位弁済後に抵当権を実行されても住特条項を利用することができます(個人再生の巻戻しと競売中止命令参照)。

 巻戻しによって,競売が取下げや取消しで終了した場合,競売費用や抵当権移転登記費用などを誰が負担するのか?ということが問題になります。

巻戻しに伴い生じる可能性のある費用

 巻戻しによって,費用負担の問題が生じる可能性がある費用には,次のようなものが考えられます。

 ①取下げや取消しによって終了した競売費用

 ②抹消すべき抵当権移転登記費用

 ③住宅ローンの弁済期間を延長した場合の延長期間の火災保険料

 ④住宅ローンの弁済期間を延長した場合の延長期間の保証会社への保証料

当然に債務者の負担になるわけではない

 上記の費用は,巻戻しや競売中止命令によって生じることになる費用ですが,直接の効果として,当然に再生債務者の費用負担になることはありません。

 住特条項のリスケジュール型や元本猶予期間併用型を定め,住宅ローンの弁済期間を延長した場合も保証人に法律上の不利益があるわけではありません。延長保証料の負担も当然に再生債務者の負担になるわけではありません。

契約で費用負担について定められている場合がある

 住宅ローン債権者や保証会社との間の契約で,費用負担に関する具体的な条項があれば,当然,再生債務者はその条項に従う必要があります。

 契約上,債務者に対する権利行使費用が債務者負担とされている場合,住宅ローン債権者は,競売費用や抵当権移転登記抹消費用を再生債務者に請求することができます。保証委託契約において,主債務者に対する権利行使費用の定めがある場合も同様です。

 住宅ローン契約に住宅への火災保険の付保と質権の設定の約定がある場合,再生債務者はその義務を負います。保証委託契約で保証料を保証期間に応じて支払うとの条項があれば,保証会社は再生債務者に延長保証料を請求できます。

再生債務者の費用負担となった場合の個人再生での取扱い

 これらの費用が再生債務者の負担となった場合,個人再生手続きでどのように扱うのかについて,いまだ定説がありません。再生債権と捉え,他の再生債権と同様に再生計画に従って権利変更し,弁済するという見解や,再生債権ではなく共益債権として随時弁済の対象とするという見解があります。