住宅ローンを延滞し、保証会社が代位弁済した後でも、個人再生手続で住宅資金特別条項を利用できますか?
保証会社の代位弁済後は住特条項は使えない
住宅ローンを組むときに、保証会社と保証契約を締結します。住宅ローンの滞納が数か月あると、銀行は保証会社から代位弁済を受けます。
銀行に代位弁済を行った保証会社は、法定代位により住宅ローン債権を取得し、即時、弁済を求めることができます(民法499条)。代位弁済後の住宅ローン債権を対象に、住宅資金特別条項を用いることができるとすると、保証会社の利益を不当に害するおそれがあります。
したがって、保証会社が代位弁済を行ったことにより代位取得した住宅ローン債権を対象に住特条項を利用することはできません(民事再生法198条1項)。
個人再生には巻戻しという制度がある
住宅ローンを組む際に、保証会社による保証を受けることは一般的です。保証会社による代位弁済があった場合、一律に住特条項は使えないとすると、代位弁済後は、ほとんどすべての住宅ローンについて、住特条項が使えないことになってしまいます。
そこで、例外として、保証会社が保証人である場合に、代位弁済後でも住特条項を利用できることにしています(民事再生法198条2項)。さらに、住特条項を定めた再生計画の認可決定が確定すると、保証債務の履行はなかったこととみなされます(民事再生法204条1項)。この制度を巻戻しといいます。
巻戻しには期間制限がある
個人再生手続において、巻戻しによって、住特条項を利用するには、保証会社が保証債務の全部を履行した日から6か月を経過する日までの間に、再生手続開始申立てをする必要があります(民事再生法198条2項)。したがって、個人再生の申立ての準備を通常よりも早くする必要があります。
6か月の期間は、債務者が保証会社による代位弁済があったことを知っていたかどうかにかかわらず、進行します。通常、保証会社が代位弁済を行う場合、債務者に連絡をします。
したがって、債務者が知らなかったということはありえません。この要件との関係で、個人再生の申立時に、代位弁済により、保証債務が消滅した日を明らかにする書面を提出する必要があります。