再度の個人再生申立て


再生計画の認可決定の確定後に、再生計画の履行が困難となった場合、再生計画の変更ハードシップ免責という制度があります。どちらの手続きも使えず、破産申立てを避けたい場合、再度、個人再生の申立てをすることはできるのでしょうか?

再度の個人再生の申立ては可能

 民事再生法190条1項は、再生計画の履行完了前に、再生債務者について新たな再生手続開始決定がなされた場合、以下のように規定しています。

再生計画の履行完了前に、再生債務者について新たな再生手続開始決定がなされた場合

(1)再生計画によって変更された再生債権は、原状に復する。

(2)再生債権者が再生計画によって得た権利に影響を及ぼさない。

 民事再生法190条1項は、再生計画認可決定の確定後、履行が完了していない段階で新たな民事再生手続の申立てが可能であることを明確にし、新たな民事再生手続と履行完了前の再生計画との調整を図ったものです。

 民事再生法190条1項は、個人再生にも適用があります。つまり、民事再生法は、再生認可決定確定後、再生計画の履行ができない状況に陥った再生債務者が再度、個人再生の申立てをすることを想定しています。

再生債権は原状に復する

 再生債権が原状に復するとは、再生計画による再生債権の変更はなかったものとされ、再生認可決定前の債権額に戻ることを意味します。

すでに弁済した部分の取扱い

 すでに再生計画に従って、弁済を行っている場合、弁済を受けた部分はどうなるのでしょうか?

 民事再生法190条6項は、新たな再生手続において、再生債権者は、再生計画により弁済を受けていても、弁済を受ける前の債権の全部をもって再生手続に参加できると規定しています。ただし、新たな再生計画に基づいて弁済を受ける際には、他の債権者が同一の割合の弁済を受けるまでは弁済を受けることができないと規定されています。

再生計画によって得た権利に影響を及ぼさない

 当初の再生計画に基づいて受けた弁済は有効であって、遡及的に弁済の効果がなかったとされるわけではないという意味です。また、再生計画によって設定された担保についても効力を失いません。

破産原因が生じるおそれがあるか?

 個人再生手続開始決定の要件として、破産原因が生じるおそれがあることが必要です。

 個人再生の再生計画では、計画弁済総額が100万円~300万円がほとんどです(民事再生法231条2項3号・4号)。つまり、1か月の弁済額は、約1万7,000円~8万4,000円の間です。そのため、再生計画認可決定後の破産申立ての場合と同様、破産原因が生じるおそれがあると認められるか?という問題があります。


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