否認の請求(破産の手続き)


破産手続きには否認権という制度があります(破産手続における否認権参照)。否認権の行使に関して、否認の請求を取り上げます。

否認権の行使

 破産法173条1項は、「否認権は、訴え、否認の請求、抗弁によって、破産管財人が行使する」と規定しています。このように、否認権の行使方法は選択的です。否認の請求を先行させる必要はありません。

 旧破産法は、否認権を必ず訴訟で行使する必要がありました。しかし、そのことが、破産手続の長期化の一因であると指摘されていました。そこで、決定手続による早期の解決のために、否認の請求が導入されました。

否認の請求の特徴

 否認の請求は、破産管財人の申立てによって、手続きが開始されます。管轄裁判所は破産裁判所の専属管轄です(破産法173条2項)。破産裁判所とは、破産事件の係属している地方裁判所のことです。大阪地裁(本庁)の場合は、否認の請求は、破産事件を担当している裁判所が審理する運用になっています。

 破産管財人は、否認の原因となる事実を疎明する必要があります(破産法174条1項)。疎明は即時に取調べのできる証拠による必要がある(民訴法188条)ので、証拠は書証に限られます。否認の請求では、相手方又は転得者の審尋が必須です(破産法174条3項)。

 否認の請求は、否認の原因となる事実について疎明で足りるので、一応確からしいという心証を裁判官に与えれば足りることになります。

 否認の請求においても、和解をすることができると解されています。

否認の請求に対する不服申立て

 否認の請求を認容する決定に不服がある場合、決定の送達から1か月以内に、異議の訴えを提起することができます(破産法175条1項)。異議の訴えが提起されると、異議訴訟で解決が図られます。

 そのため、相手方が否認を強く争う姿勢を示している場合は、当初から否認の訴えを提起する方が、解決が早くなることが考えれます。

 破産管財人は、否認の請求の棄却・却下決定を受けても、破産管財人から異議の訴えを提起することができません。破産法に規定がないことから、即時抗告をすることもできません。なお、否認の請求に既判力がないので、否認の訴えを提起することはできるとされています。


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