破産手続終了後の財団債権の取扱いを取上げます。
破産手続終了後の財団債権
破産手続において、破産財団が不足しているため、財団債権が完済されずに破産手続が終了するケースがあります。
この場合に、破産者が、残った財団債権について責任を負うのか?という議論があります。
なお、破産者が法人の場合は、破産手続終了によって、法人格が消滅します(会社法471条5号参照)。したがって、ここでの議論は、破産者が個人の場合です。
学説の考え方
この議論について、以下のように、いくつかの学説があります。
①全ての財団債権について破産者の責任を肯定する見解
この見解は、民事執行法で個別執行の執行費用で必要なものは、債務者の負担とされていることを根拠にしています。
この見解に対しては、破産者は、破産財団の管理処分権を失っている(破産法78条1項)にもかかわらず、破産財団に関して生じた費用について責任を負うのは不合理との批判があります。
②全ての財団債権について破産者の責任を否定する見解
破産者の経済的再生の見地から、財団債権を個々に検討して、破産者自身の責任が認められる財団債権は存在しないという見解です。
この見解によれば、租税債権や労働債権の財団債権部分についても破産者は責任を負わないことになります。しかし、これらの債権の破産債権部分は、非免責債権であることと均衡を欠いているとの批判があります。
③破産債権の性質を有する財団債権についてのみ破産者の責任を認める見解
近時、最も有力な見解と言われています。財団債権の分類で触れたように、財団債権には、①本来的財団債権と②政策的財団債権があり、取扱いを区別する見解です。
①本来的財団債権は、破産債権者の共同の利益のために生じた債権なので、利益を享受していない破産者の個人責任を認めるべきではないこと、②政策的財団債権については、非免責債権である租税債権等との均衡上、破産者の責任を認めるべきという見解です。
④破産債権の免責の規律に準じ、免責許可のない場合や非免責債権に該当する債権は破産者の責任を認める見解
破産者が財団債権について責任を負うかどうかは、免責制度の趣旨の問題として考えるべきという見解です。
しかし、免責の可否は破産債権を対象に判断されるので、免責の可否と財団債権の免責とを結びつけることはできないとの批判があります。