弁護士が債務者の代理人として,受任通知を債権者に送付する行為が支払停止に当たるかが問題になった最高裁判決を紹介します。

最高裁平成24年10月19日判決

 否認権との関係で,債務者の代理人である弁護士が債権者一般に対して債務整理開始通知を送付した行為が支払停止(破産手続開始原因である支払不能と支払停止参照)に当たるかどうかが争われました。

事案の概要

 Aは,平成21年1月18日,B法律事務所に対し,債務整理を委任し,同法律事務所の弁護士らは,その頃,Aの代理人として,Aに対して金銭を貸し付けていた被上告人を含む債権者一般に対し,債務整理開始通知を送付した。

 本件通知には,債権者一般に宛てて,「当職らは,この度,後記債務者から依頼を受け,同人の債務整理の任に当たることになりました。」,「今後,債務者や家族,保証人への連絡や取立行為は中止願います。」などと記載され,Aが債務者として表示されていた。もっとも,本件通知には,Aの債務に関する具体的な内容や債務整理の方針は記載されておらず,本件弁護士らがAの自己破産の申立てにつき受任した旨も記載されていなかった。

 Aは,平成21年2月15日から同年7月15日までの間,被上告人に対し,合計17万円の債務を弁済した。Aは,平成21年8月5日,破産手続開始の決定を受けた。

最高裁の判断

 最高裁は,弁護士が債務者の代理人として受任通知を送付する行為は支払停止に当たると判断しています。

 「支払の停止」とは,債務者が,支払能力を欠くために一般的かつ継続的に債務の支払をすることができないと考えて,その旨を明示的又は黙示的に外部に表示する行為をいうものと解される。

 本件通知には,債務者であるAが,自らの債務の支払の猶予又は減免等についての事務である債務整理を,法律事務の専門家である弁護士らに委任した旨の記載がされており,また,Aの代理人である当該弁護士らが,債権者一般に宛てて債務者等への連絡及び取立て行為の中止を求めるなどAの債務につき統一的かつ公平な弁済を図ろうとしている旨をうかがわせる記載がされていたというのである。

 そして,Aが単なる給与所得者であり広く事業を営む者ではないという本件の事情を考慮すると,上記各記載のある本件通知には,Aが自己破産を予定している旨が明示されていなくても,Aが支払能力を欠くために一般的かつ継続的に債務の支払をすることができないことが,少なくとも黙示的に外部に表示されているとみるのが相当である。

 そうすると,Aの代理人である本件弁護士らが債権者一般に対して本件通知を送付した行為は,破産法にいう「支払の停止」に当たるというべきである。