破産手続における自動車の所有権留保について判断した最高裁判決を紹介します。

最高裁平成29年12月7日判決

 最高裁平成22年6月4日判決が,自動車の売買代金の立替払をした者が,販売会社に留保されていた自動車の所有権の移転を受けたが,購入者に係る再生手続が開始した時点で当該自動車につき所有者としての登録を受けていない場合,信販会社は留保所有権を行使できないと判断しています(自動車の所有権留保と倒産手続参照)。

 同判決を受け,信販会社の契約条項が変更されていて,破産管財人と信販会社との間で同判決の射程をめぐって争いになっていました。

事案の概要

 本件購入者,本件販売会社及び被上告人は,平成25年8月20日,三者間において,①本件販売会社が本件購入者に対し本件自動車を割賦払の約定で売却すること,②売買代金債権を担保するため本件販売会社に本件自動車の所有権が留保されること,③被上告人が本件購入者の委託を受けて本件購入者の本件販売会社に対する売買代金債務を連帯保証することなどを内容とする契約を書面により締結し,同契約において,要旨,次のとおり合意した。

 (1) 本件購入者が売買代金の支払を1回でも怠り,被上告人が売買代金残額の一括弁済を必要と認めたときは,被上告人は,本件購入者に通知・催告することなく,保証債務の履行として本件販売会社に売買代金残額を支払うことができる。

 (2) 被上告人が保証債務の履行として本件販売会社に売買代金残額を支払った場合には,民法の規定に基づき,被上告人は当然に本件販売会社に代位して売買代金債権及び本件留保所有権を行使することができることを確認する。

 (3) 本件購入者は,期限の利益を喪失したときは,被上告人が代位取得した売買代金債権の弁済のため,直ちに本件自動車を被上告人に引き渡す。

 (4) 被上告人は,上記ウにより引渡しを受けた本件自動車について,その評価額等をもって,売買代金債権の弁済に充てる。 

 本件自動車について,平成25年8月20日,所有者を本件販売会社,使用者を本件購入者とする新規登録がされ,本件販売会社は,その頃,本件購入者に本件自動車を引き渡した。被上告人は,本件購入者が売買代金の支払を怠ったため,平成26年9月2日,本件販売会社に対し,上記(1)に基づいて,保証債務の履行として売買代金残額を支払った。

 本件購入者は,平成27年5月13日,破産手続開始の決定を受け,上告人が破産管財人に選任された。本件販売会社から本件自動車を購入した者の売買代金債務を連帯保証した被上告人が,保証債務の履行として本件販売会社に売買代金残額を支払い,本件販売会社に留保されていた本件自動車の所有権を法定代位により取得したと主張し,上記支払後に破産手続開始の決定を受けた本件購入者の破産管財人である上告人に対し,別除権の行使として本件自動車の引渡しを求めた。

最高裁の判断

 最高裁は,信販会社が別除権を行使できると判断しました。

 自動車の購入者と販売会社との間で当該自動車の所有権が売買代金債権を担保するため販売会社に留保される旨の合意がされ,売買代金債務の保証人が販売会社に対し保証債務の履行として売買代金残額を支払った後,購入者の破産手続が開始した場合において,その開始の時点で当該自動車につき販売会社を所有者とする登録がされているときは,保証人は,上記合意に基づき留保された所有権を別除権として行使することができるものと解するのが相当である。

 保証人は,主債務である売買代金債務の弁済をするについて正当な利益を有しており,代位弁済によって購入者に対して取得する求償権を確保するために,弁済によって消滅するはずの販売会社の購入者に対する売買代金債権及びこれを担保するため留保された所有権を法律上当然に取得し,求償権の範囲内で売買代金債権及び留保所有権を行使することが認められている。そして,購入者の破産手続開始の時点において販売会社を所有者とする登録がされている自動車については,所有権が留保されていることは予測し得るというべきであるから,留保所有権の存在を前提として破産財団が構成されることによって,破産債権者に対する不測の影響が生ずることはない。そうすると,保証人は,自動車につき保証人を所有者とする登録なくして,販売会社から法定代位により取得した留保所有権を別除権として行使することができるものというべきである。

 最高裁22年6月4日判決は,販売会社,信販会社及び購入者の三者間において,販売会社に売買代金残額の立替払をした信販会社が,販売会社に留保された自動車の所有権について,売買代金残額相当の立替金債権に加えて手数料債権を担保するため,販売会社から代位によらずに移転を受け,これを留保する旨の合意がされたと解される場合に関するものであって,事案を異にし,本件に適切でない。