破産手続において,債権譲渡と否認権について判断した最高裁判決を紹介します。

最高裁平成16年7月16日判決

 債権譲渡人について支払停止又は破産の申立てがあったことを停止条件とする債権譲渡契約に係る債権譲渡が否認権の対象になるかどうかが争われた事案です。

事案の概要

 破産会社は,鋼材の販売,加工等を業とする会社であるが,平成11年2月,上告人との間で,破産会社が上告人に対して負担する一切の債務の担保として,破産会社の特定の第三債務者らに対する現在及び将来の売掛債権等を上告人に包括的に譲渡することとし,その債権の譲渡の効力発生の時期は,破産会社において,破産手続開始の申立てがされたとき,支払停止の状態に陥ったとき,手形又は小切手の不渡処分を受けたとき等の一定の事由が生じた時とする旨の契約を締結した。

 破産会社は,平成12年3月31日,手形の不渡りを出し,支払を停止した。破産会社は,同年4月3日以降,上記第三債務者らに対し,確定日付のある証書による債権譲渡の通知をした。

 破産会社は,同年6月16日,名古屋地方裁判所において破産宣告を受け,被上告人が破産管財人に選任された。

 被上告人は,本訴において,上告人に対し,本件債権譲渡契約に係る債権譲渡については旧破産法72条1号又は2号に基づき,債権譲渡の通知については同法74条1項に基づき,それぞれ否認権を行使し,債権譲渡に係る債権につき,①上告人が第三債務者から弁済を受けたものについては,その受領した金員が不当利得であるとして,その返還を求め,②第三債務者が支払を留保しているものについては,当該債権が被上告人に帰属することの確認を求め,③第三債務者が弁済供託をしたものについては,その還付請求権が被上告人に帰属することの確認を求めるなどの請求をしている。

最高裁の判断

 旧破産法72条2号は,破産者が支払停止又は破産の申立てがあった後にした担保の供与,債務の消滅に関する行為その他破産債権者を害する行為を否認の対象として規定している。その趣旨は,債務者に支払停止等があった時以降の時期を債務者の財産的な危機時期とし,危機時期の到来後に行われた債務者による上記担保の供与等の行為をすべて否認の対象とすることにより,債権者間の平等及び破産財団の充実を図ろうとするものである。

 債務者の支払停止等を停止条件とする債権譲渡契約は,その契約締結行為自体は危機時期前に行われるものであるが,契約当事者は,その契約に基づく債権譲渡の効力の発生を債務者の支払停止等の危機時期の到来にかからしめ,これを停止条件とすることにより,危機時期に至るまで債務者の責任財産に属していた債権を債務者の危機時期が到来するや直ちに当該債権者に帰属させることによって,これを責任財産から逸出させることをあらかじめ意図し,これを目的として,当該契約を締結しているものである。

 上記契約の内容,その目的等にかんがみると,上記契約は,旧破産法72条2号の規定の趣旨に反し,その実効性を失わせるものであって,その契約内容を実質的にみれば,上記契約に係る債権譲渡は,債務者に支払停止等の危機時期が到来した後に行われた債権譲渡と同視すべきものであり,上記規定に基づく否認権行使の対象となると解するのが相当である。