簡易生命保険の解約返戻金が破産財団に帰属するかどうかが争われた最高裁判決判決を紹介します。

最高裁昭和60年11月15日判決

 旧簡易生命保険法は,解約返戻金を差押禁止財産と規定していました。本判決は,法人が破産した場合に,簡易生命保険の解約返戻金が破産財団に帰属するかどうかが争われました。

事案の概要

 破産会社は,郵政省簡易保険局長との間で,簡易生命保険契約を締結した。この契約は,破産会社が被上告人に対して昭和53年6月分の保険料を支払わなかったため,同年9月20日に失効し。

 その結果,破産会社は,被上告人に対し,還付金112万5000円及び剰余金22万6800円の合計135万1800円から未払保険料3万2400円を控除した残額131万9400円を受け取るべき権利を取得した。

 破産会社は,昭和53年8月17日大阪地方裁判所において破産宣告を受け,同日上告人がその破産管財人に選任された。そこで,上告人は,昭和54年10月26日,被上告人に対し,本件還付金等の支払を求めた。

原審の判断

 原審は,上告人の本件還付金等の支払を求める本訴請求につき,旧簡易生命保険法50条の規定が自然人と法人とを区別していないこと及び法人が簡易生命保険に加入することは同法1条の趣旨に合致することを理由に,本件還付金等を受け取るべき権利は差し押さえることができず,したがって,右権利は破産会社の破産財団には属しないと判断しました。

最高裁の判断

 法人を保険金受取人とする簡易生命保険契約において,法人が破産宣告を受けて解散した場合には,旧簡易生命保険法39条の規定に基づく還付金請求権は破産財団に属するものと解するのが相当である。

 同法50条が還付金を受け取るべき権利は差し押さえることができないものとした趣旨は,これを保険金受取人の債権者の一般担保としないことによって,保険金受取人の最低生活を保障することにあると解されるところ,保険金受取人が破産宣告を受けた場合においては,それが自然人であるときには,その最低生活を保障するために還付金請求権を自由財産として残すことが要請されるのに対し,保険金受取人が法人であり,破産宣告を受けて解散したときには,還付金請求権を破産財団から除外して破産法人の自由な管理処分に委ねるべき合理的根拠はもはや存在しないものといわざるをえないから,同規定は適用されないというべきである。