破産管財人による商事留置権の消滅請求


破産管財人による商事留置権の消滅請求を取り上げます。

破産手続における商事留置権の取扱い

 商事留置権は、破産手続において、特別の先取特権とみなされます(破産法66条)。したがって、留置的効力は消滅しません。破産手続において、商事留置権の目的物が処分された場合、留置権者は、処分代金から優先弁済を受けることができます。

 また、売却代金から配当を受けるために留置権対象物を換価することができます。さらに、破産管財人から留置対象物の返還を求められても、被担保債権の全額の弁済を受けるまで返還を拒むことができます。

 ※破産手続における商事留置権破産手続と商事留置権に関する判例参照

破産管財人による商事留置権の消滅請求

 破産法は、留置対象物の回復が破産法36条によって維持されている事業に必要であること、その他破産財団の価値の維持、増加に資する場合は、留置対象物の価額に相当する金銭の弁済のみによって、商事留置権を消滅させる権利を管財人に付与しています(破産法192条)。

 破産手続開始決定時の在庫商品の一部に商事留置権が設定されている場合、その在庫商品と他の在庫商品を一括で換価した方が、高く売却できるというケースで利用することが想定されます。

商事留置権消滅請求の手続き

 破産管財人が商事留置権消滅請求権を行使するには、裁判所の許可を得て(破産法192条3項)、商事留置権者に商事留置権消滅請求書を送付し、管財人の査定額を弁済する(破産法192条2項)という手続を踏みます。

 商事留置権者が管財人による弁済を拒む場合は、管財人は、管財人の査定額を供託することができます。

商事留置権消滅請求の効果

 管財人査定額が留置対象物の価額に合致する価額である場合、商事留置権は、①管財人が商事留置権消滅請求をした時又は管財人査定額を弁済した時のいずれか遅い時に消滅します(破産法192条4項)。

 商事留置権が消滅すると、商事留置権者は、留置的効力を主張できず、管財人による留置対象物の返還請求に応じる義務を負います。

 一方、管財人査定額が留置対象物の価額に満たない場合は、商事留置権は消滅しません。そのため、商事留置権者は、留置対象物を管財人に引渡す義務を負いません。この場合、商事留置権者としては、留置対象物について動産競売を申立てをすることができます。


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