破産手続における民事留置権


民事留置権は、破産手続でどのように扱われますか?

破産手続における民事留置権

 破産手続において、民事留置権(民法295条)は、破産財団に対して効力を失い、消滅します(破産法66条3項)。

 したがって、破産財団に属する財産について民事留置権を有する者は、目的物を留置する権限を失います。つまり、目的物を破産管財人に、引き渡さなければなりません。

 なお、民事留置権の原因が、双方未履行の双務契約に基づくもので、破産管財人が履行を選択した場合は(破産法53条1項)、同時履行の抗弁権を行使することで目的物の引渡しを拒むことができます。

 また、民事留置権者が、同時に特別の先取特権を有する場合は、別除権者(破産法65条1項)としての権利行使が可能です(破産手続における別除権参照)。

財団債権を被担保債権とする民事留置権

 上記のように、破産手続において民事留置権は消滅します。ただし、財団債権を被担保債権とする民事留置権も消滅するのか?は、議論があります。

 被担保債権が財団債権であっても、民事留置権は消滅するという見解が有力と言われています。しかし、随時弁済を受けることができる財団債権(破産法2条7項)を被担保債権とする場合も留置的効力による間接的な弁済促進効が機能することを根拠に、民事留置権は消滅しないという見解もあります。

 なお、破産手続開始決定後に、新たに生じた財団債権を被担保債権とする民事留置権は、効力を失うことはありません。


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