破産手続における一般の財団債権を取り上げます。
一般の財団債権
破産法148条は、財団債権に該当する債権を列挙しています。破産法148条1項に規定されている財団債権を一般の財団債権といいます。また、一般の財団債権以外の財団債権を特別の財団債権といいます。
⑥事務管理又は不当利得により破産手続開始決定後に破産財団に対して生じた請求権
破産手続開始決定後に、破産財団が事務管理又は不当利得によって、利益を得た場合、費用償還又は利得返還を認めるのが公平に適うことから、財団債権として扱うことにしています。
この財団債権の典型例は、破産管財人が取戻権の目的となる株式を保管中にその株式の配当金を取得した場合です。また、管財人が賃借人の場合に賃貸借契約を合意解除した際に破産財団が負担する未払賃金を質権の目的とされていた敷金に充当する合意をした場合も挙げられます。
破産管財人が譲渡担保・動産先取特権の目的物を換価処分した場合に、財団債権としての不当利得返還請求権の成否が問題になります。譲渡担保については、第三者対抗要件を具備している限り、管財人が担保目的物を換価処分すれば、不当利得が成立し、譲渡担保権者は財団債権としての不当利得返還請求権を行使できると解されています。一方、動産先取特権については、不当利得が成立しないと解されています。
⑦委任の終了等の後、急迫の事情があるためにした行為によって破産手続開始決定後に破産財団に対して生じた請求権
破産手続開始決定によって、委任契約は終了します。委任契約の終了後でも急迫の事情がある場合は、委任者に、善処義務が課されています。
その善処義務に基づく事務処理が破産財団の利益のためになされた場合は、その限りで、委任契約の延長効果を認め、委任契約に基づく請求権を破産財団が負担するのが公平であるとして財団債権として扱うこととしています。費用償還請求権のみならず、報酬請求権もこの財団債権に当たると解されています。