勤務先の会社が破産しました。未払の給与はどうなりますか?
労働債権の破産手続における取扱い
労働債権が破産手続において、どのように扱われるか?という問題は、事業者の破産の場合に、未払の給与を元従業員が受取ることができるか?という問題と直結します。
破産手続において、未払の給料等の労働契約に基づいて発生する労働債権は、①一部が財団債権になり、②その他は優先的破産債権になります。
財団債権になる労働債権
財団債権となる労働債権は、以下の2つです(破産法149条1項・2項)。
財団債権となる労働債権
①破産手続開始決定前3か月間の使用人の給料の請求権
②破産手続終了前に退職した使用人の退職手当の請求権のうち、退職前3か月間の給料の総額と破産手続開始前3か月間の給料の総額のいずれか多い方の額に相当する金額
この2つ以外の労働債権は、優先的破産債権です(破産法98条1項)。
①破産手続開始決定前3か月間の使用人の給料の請求権
破産者との間に、労働に従事して報酬を受ける関係が実態として認められれば足り、形式上は、委任や請負となっていても雇用関係が認められることがあります。
労働の対価として支払われるものであれば、名目を問わず給料に当たります(労基法11条)。残業代・家族手当・通勤手当などの手当も給料に含まれます。
実費を精算して支払うような出張費のようなものは、給料に含まれません。賞与も労働の対価として支払われるので、給料に当たります。
労働者を解雇した際に支払う解雇予告手当(労基法20条1項)は、労基法で定められた特別の給付であって労働の対価ではありません。したがって、給料に当たりません。
②破産手続終了前に退職した使用人の退職手当
破産手続では、退職金の一部が財団債権として保護されます。対象になるのは、破産手続終了前に退職した者です。退職が破産手続開始決定前か後かは問いません。
財団債権となる退職金の範囲は、退職前の3か月間の給料の総額と破産手続開始決定前3か月間の給料の総額の多い方の金額です。
ここでいう給料には、前述のように、名目を問わず、労働の対価として支払われるものをすべて含みます。賞与についても給料に含みます。
労働債権の弁済許可
財団債権である労働債権は、随時弁済することができます。一方、優先的破産債権である労働債権は、配当手続きによらなければ弁済することができません。
配当については、以下の「破産の配当手続き」を参照
しかし、労働債権は、労働者の生活を維持するために早期に支払われる必要があります。そこで、裁判所の許可を得て、労働債権を弁済することのできる制度があります(破産法101条1項本文)。
労働債権の弁済許可の要件
弁済許可によって、労働債権を弁済するには、以下の要件を充足する必要があります。
労働債権の弁済許可の要件
(1)優先的破産債権である給料の請求権又は退職手当の請求権に関するものであること
※解雇予告手当も弁済許可の対象になると解されています。
(2)債権者である労働者が、当該労働債権について届出をしていること
(3)債権者である労働者が、当該優先的破産債権の弁済を受けなければ、生活を維持するのに困難を生じるおそれがあること
(4)弁済によって、財団債権又は他の先順位、同順位の優先的破産債権を有する者の利益を害するおそれがないこと