法人破産と優先的破産債権の範囲


法人の破産について、優先的破産債権の範囲を判断した最高裁判決を紹介します。

最高裁昭和46年10月21日判決

 破産手続において、優先的破産債権として扱われるのは、一般の先取特権その他一般の優先権がある破産債権です(破産債権の種類と優先順位参照)。

 債務者が法人の場合にも、民法306条4号の日用品供給先取特権の規定の適用があり、破産手続において、優先的破産債権として扱われるのか?が問題になった事案です。

最高裁の判断

 法人である破産会社に対して、破産宣告を受ける前に供給した水道水の料金債権が優先的破産債権に当たるか?が争われました。最高裁は以下のように、優先的破産債権に当たらないと判断しました。

 民法306条4号、310条の法意は、同条の飲食品および薪炭油の供給者に対し一般先取特権を与えることによって、多くの債務を負っている者あるいは資力の乏しい者に日常生活上必要不可欠な飲食品および薪炭油の入手を可能ならしめ、もってその生活を保護しようとすることにあると解される。かかる法意ならびに同法310条の文言に照らせば、同条の債務者は、自然人に限られ、法人は債務者に含まれないと解するのが相当である。もし法人が債務者に含まれると解するならば、法人に対する日用品供給の先取特権の範囲の限定が著しく困難になり、一般債権者を不当に害するに至ることは明らかである。そして、このような解釈は、法人の規模、経営態様等のいかんを問わず妥当するものというべきであり、本件における破産会社の如きいわゆる個人会社であっても結論を異にするものではない。


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