破産手続における否認権と相手方の債権の回復


破産手続において、否認権が行使された場合の相手方の債権の回復を取上げます。

相手方の債権の回復

 破産法169条は、弁済その他の債務の消滅に関する行為が、偏頗行為否認の対象とされた場合の相手方の地位を規定しています。相手方が破産者から受けた給付を返還し又は価額を償還した場合、相手方の債権が復活します。

否認の対象

 相手方の債権の回復の要件として、否認の対象が、債務の消滅に関する行為である必要があります。

 債務の消滅には、本旨弁済のみならず、期限前弁済や代物弁済も含まれます。任意の弁済に限らず、執行行為によるものも含まれます。また、破産者が物上保証人として第三者弁済したものも含まれます。

給付の返還又は価額の償還

 債務の消滅に関する行為が否認された場合に、当然に相手方の債権が復活するのではなく、相手方が破産財団に対して原状回復を履行したときに復活します。

 給付の返還とは、破産者から受領した財産を破産財団へ返還することです。価額の償還とは、給付の返還が目的物の滅失や相手方から他の者への譲渡等によって、不可能又は困難な場合に、目的物の価額相当額を破産財団に支払うことです。

相手方の債権が復活

 上記の要件が充足された場合、相手方の債権は、消滅前の状態で復活します。約定の利息や遅延損害金等の付帯請求の権利も当然に、復活します。相手方は、債権証書の返還、再交付を請求することができます。復活する相手方の債権は破産債権(破産法2条5項)になります。

 破産者による保証債務の弁済行為が否認された場合は、保証債務とともに、主債務についても復活することになります。債権が復活することで、付されていた物的担保や人的担保も復活することになります。


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