牽連破産の場合の再生手続開始決定後の損害金の処理を取上げます。
牽連破産
民事再生手続が、何らかの理由で手続の途中で頓挫することがあります。民事再生手続が頓挫した場合、裁判所は、原則、職権で破産手続を開始します(民事再生法250条1項)。民事再生手続が破産手続に移行することを牽連破産といいます。
再生計画によって、免除された損害金は、破産手続に移行すると、どのように扱われるのでしょうか?
再生計画の原状回復
民事再生手続から破産手続に移行した場合、再生計画によって変更された再生債権は原状に復します。つまり、再生計画によって免除が認められた再生手続開始決定後の損害金は、復活します。
復活した損害金は、破産手続開始決定前の損害金です。したがって、債権者は、劣後しない破産債権として債権届出することができます。
債権届出の再利用
牽連破産の場合、先行する民事再生手続と後行の破産手続は、手続きとしては、別個の手続きです。
①再生手続の開始時期と破産手続開始時期が接着している場合や②内容に変動が予想されない再生債権が多くを占めている場合、改めて破産債権の届出を行う実益はほとんどありません。再生手続の債権届出を破産手続でも利用できれば合理的です。
そこで、裁判所が相当と認めるときは、新たな破産債権の届出を必要とせず、再生手続の債権届出を破産手続の債権届出として利用することができます(民事再生法253条1項)。
この場合、破産手続開始決定前の損害金であっても、再生手続開始決定後に発生した損害金である以上は、劣後的破産債権に該当します。
ただし、破産債権者が新たな債権届出を行った場合は、損害金は、原則どおり、劣後しない破産債権として扱うことになります。
もっとも、債権届出の再利用は実務上は、ほとんど行われていません。