財団債権相互間における破産管財人報酬の優先性を判断した最高裁判決を紹介します。
最高裁昭和45年10月30日判決
破産財団によって、財団債権のすべてを弁済できない場合に、破産管財人の報酬が、国税等の公課に優先するか?が問題になった事案です。
事案の概要
本件破産手続において、熱田税務署長が、破産管財人である上告人に対し、昭和34年3月6日付弁済要求書をもって破産会社であるA社に対する原判示租税債権につき交付要求をしたが、同債権は真実存在するものであること、しかし上告人としては、当時、破産事務の処理を開始して3年余に及び間もなく破産債権者に配当して破産手続を終る日も遠くない状況の時であったのに、本件債権を支払えば配当ができなくなる見込であり、また破産会社の帳簿上も本件債権の存在は明確でなかったことから、その頃および同年8月頃、熱田税務署の係官に対し、本件債権のうち金2万1,000円余を支払うから残余は財団から支払わないですむようにしてほしい旨申し入れたが、係官から財団の財産状況につき報告書の提出を求められたのみで、申入に同意する旨の回答はなかったこと、その後上告人は本件債権を弁済から除外し、破産終結にいたった。
最高裁の判断
最高裁は、以下のように、破産管財人の報酬は、国税等の公課に優先すると判断しました。
破産手続において破産管財人の受けるべき報酬は、旧破産法47条3号にいう破産財団ノ管理、換価及配当ニ関スル費用」に含まれると解すべきである。
この費用は、共益費用であるから、それが国税その他の公課に優先して支払を受けられるものであることはいうまでもないことであるが、このことは破産財団をもってすべての財団債権を弁済することができない場合でも同様であると解するのが相当である。旧破産法51条1項本文は、財団財産が財団債権を弁済するに不足した場合には、法令に定める優先権にかかわらず各財団債権の額に応じて按分する旨を規定するが、前述のような共益費用が国税その他の公課に優先すべきことは、元来自明のことであって、旧破産法51条の規定がこの法理までも変更したものと解することはできない。