フルペイアウト方式のファイナンス・リース契約に破産法53条の双方未履行の双務契約の規定が適用されるか?が争われてきました。
フルペイアウト方式のファイナンス・リース契約
ファイナンス・リース契約は、リース会社がユーザーの代わりにサプライヤーから物品を購入してユーザーに使用させて、ユーザーは購入代金に金利・諸経費を上乗せしたリース料をリース会社に支払う契約です。
ユーザーがリース料の支払を怠った場合、まず、リース会社は、物品の利用権限を取上げて、物品を引き上げます。そして、ユーザーは、残期間のリース料又はこれに相当する損害金を支払うことになります。
購入時の物品の購入代金全額と購入時の諸費用等の全額が、リース料の支払で回収されるフルペイアウト方式のファイナンス・リース契約に関して、破産法53条が適用あるのか?が争われてきました。
破産法53条については、以下の記事参照
最高裁判決を踏まえ、ファイナンス・リース契約は、目的物件の所有権又は利用権限を担保としたリース会社からユーザーに対する与信であるとして、破産法53条は適用されないと解する考え方が有力といえます。
最高裁平成7年4月14日判決
会社更生手続に関して、フルペイアウト方式のファイナンスリース契約の未払リース料債権の性質が問題になりました。
最高裁の判断
最高裁は、未払リース料債権は更生債権に該当すると判断しました。
フルペイアウト方式によるファイナンス・リース契約において、リース物件の引渡しを受けたユーザーにつき会社更生手続の開始決定があったときは、未払のリース料債権はその全額が更生債権となり、リース業者はこれを更生手続によらないで請求することはできないものと解するのが相当である。
ファイナンス・リース契約は、リース期間満了時にリース物件に残存価値はないものとみて、リース業者がリース物件の取得費その他の投下資本の全額を回収できるようにリース料が算定されているものであって、その実質はユーザーに対して金融上の便宜を付与するものであるから、リース契約においては、リース料債務は契約の成立と同時にその全額について発生し、リース料の支払が毎月一定額によることと約定されていても、それはユーザーに対して期限の利益を与えるものにすぎず、各月のリース物件の使用と各月のリース料の支払とは対価関係に立つものではない。