個人再生の再生計画認可決定後に、支払いが困難となった場合、どうすればいいですか?
再生計画の変更
個人再生の再生計画認可決定後の手続きとして、ハードシップ免責を取り上げました。しかし、順序としては、①再生計画の変更→②ハードシップ免責という流れになります。
ハードシップ免責については、以下の記事参照
ハードシップ免責(個人再生の手続き)
個人再生手続は、再生計画にしたがって返済していく手続です。返済中に返済が困難になった場合、ハードシップ免責という制度があります。ハードシップ免責の概要を解説します。
再生債務者は、再生計画を履行することが困難になった場合、再生計画の変更を申立てることができます(民事再生法234条)。再生計画の変更が認められるには、やむを得ない事由で再生計画を遂行することが著しく困難であることが必要です。
典型的には、再生計画認可決定後に、病気で働けなくなったり、リストラによって、給与が大きく減額したというような場合を挙げることができます。
やむを得ない事由
やむを得ない事由は、当初の再生計画を立案する段階で予測できず、再生債務者のコントロールができない事情が必要です。
たとえば、再生債務者が自主退職した場合は、再生計画の変更は認められません。また、再生計画を立案する時点で、減収が予想されていた場合もこの要件は満たさないとされています。
再生計画の遂行が著しく困難
個人再生手続きは、債務者が生活を切り詰めて、債務を3年又は最長5年間にわたって支払うことを前提にしています。そのため、再生計画の履行に多少、困難が生じることは、もともと想定されています。単に困難になった場合や、多少、苦しくなったという場合を排除するための要件です。
住宅資金特別条項は変更できない
債務整理の中で、個人再生を選択する最大のメリットは、住特条項を用いて、住宅ローンのある自宅不動産を残すことです。
では、住特条項を定めた場合に、再生計画の変更によって、住特条項を変更することはできるのでしょうか?住特条項は、一般の再生債権に対する再生計画の規制とまったく別の規制を受けます。そのため、再生計画の変更において、住特条項を変更することはできないと解されています。
再生計画の変更方法
再生計画の変更は、次の範囲で変更が認められます。
再生計画案作成と同じ制約
再生計画の変更の場合も、再生計画案作成の際と同じく以下の制約を受けます。
再生計画の変更を含む再生計画案作成の際の制約
①3か月に1回以上弁済期が到来する
②弁済方法が再生債権者間で平等である
再生計画変更に特有の制約
再生計画の変更に特有の制約に次のものがあります(民事再生法234条1項)。
再生計画の変更に特有の制約
①変更内容は、再生計画で定められた債務の期限の延長に限る
②延長の期間は、変更前の再生計画を基礎として2年以内
つまり、再生計画の変更では、計画弁済額を増減させることはできません。
再生計画変更の手続き
再生計画の変更に際して、再生債権者の意見を聴取する必要があります。そのため、再生計画変更の申立てから認可決定が確定するまでに、3か月以上かかります。
再生計画は3か月に1回以上の弁済をしなければならないので(民事再生法229条2項1号)、再生計画変更の手続中に、再生計画に基づく弁済が1回は到来することになります。この弁済を見込んだ再生計画変更案を作成するとともに、弁済原資を確保する必要があります。